「ラジオ体操」は子どもの頃に体育の準備運動などで繰り返し取り組んだ身近な体操ですが、いま改めて注目を浴びています。スポーツドクターとして多くのアスリートと関わってきた整形外科医の中村格子先生に、「力を入れるところ、伸ばすところを意識して、ストレッチ効果が高める」ラジオ体操のやり方を、13の運動をそれぞれ徹底解説していただきました!
効果アップの3ポイント
【Point1】「呼吸」を意識
自然な呼吸が基本ですが、動きに合わせて「吸う」「吐く」を意識することで運動効果が上がります。
●伸びる/胸を開く⇒「吸う」
●力を入れる・ゆるめる/胸を閉じる⇒「吐く」
【Point2】「効く部位」を意識
筋肉は脳からの指令で動きます。「どこを動かし、どこに力を入れ、どこに効いているのか」を意識しながら運動をすることで、さらなる効果が期待できます。
【Point3】朝、元気よく!
一日の中でいちばん活動的な朝の体操がおすすめです。洗顔し、白湯を飲んで起床後30分~1時間くらいがベスト。朝、全身運動をすることで活力がみなぎります。朝食後すぐは、避けましょう。
スポーツドクターが運動別に効果的なやり方を解説!
1.伸びの運動
【意識するポイント】
深呼吸ではなく、全ての運動を正しい姿勢で行うための伸びの運動です。背中とおなかをしっかり伸ばしましょう。息を吸うときはおへそを持ち上げるようにへこませます。
こんな効果が!「きれいな姿勢になり、肩こり予防にも。」
腹横筋が刺激され腹筋効果があります。
詳しい記事はこちら:「きれいな姿勢」を作りましょう。ラジオ体操「伸びの運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(1)
2.腕を振って脚を曲げ伸ばす運動
【意識するポイント】
かかとを上げたまま、脚を曲げ伸ばします。腕を振るとき、前のめりにならないよう注意。
こんな効果が!「美脚&小尻に」
脚とお尻がキュッと締まります。自然と体幹も鍛えられ、全身の血行が良くなります。
詳しい記事はこちら:「美脚&小尻」に♪ ラジオ体操「腕を振って脚を曲げ伸ばす運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(2)
3.腕を回す運動
【意識するポイント】
腕を大きく回して、肩甲骨周りの筋肉を動かします。ゆっくり腕を上げ、顔の前でクロスさせてから、力を抜いて遠心力に任せて腕をストンと素早く落とします。
こんな効果が!「美しい背中に」
肩甲骨周りの筋肉が鍛えられ、美しい背中をつくります。血行が良くなり、肩こりも改善。
詳しい記事はこちら:「美しい背中」を作る!ラジオ体操「腕を回す運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(3)
4.胸を反らす運動
【意識するポイント】
胸を大きく開いて大胸筋と首周りの筋肉をストレッチ。腕を肩の高さに上げるときは小さく、斜め上に上げるときは力強く。ひざを曲げないよう注意。
こんな効果が!「デコルテがすっきり」
大胸筋がストレッチされ、デコルテ(首から胸元あたり)がきれいに。猫背も解消します。
詳しい記事はこちら:「デコルテ」がすっきり!ラジオ体操「胸を反らす運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(4)
5.体を横に曲げる運動
【意識するポイント】
脇腹を伸ばす体側のストレッチです。腕を勢いよく振り上げて、腕に引っ張られるように横曲げをします。腕は耳につけ、体が前のめりにならないよう注意。
こんな効果が!「脇腹すっきり」
左右交互に伸ばすのでバランスが整い、脇腹がすっきり。リンパの流れも改善します。
詳しい記事はこちら:「脇腹」に効く!ラジオ体操「体を横に曲げる運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(5)
6.体を前後に曲げる運動
【意識するポイント】
脊椎の柔軟性をアップさせる運動です。上半身の重みで弾みをつけながら、段階的に深く前に3回曲げます。体を反らせるときは腰に手を当て、腰を押し出す感じで。
こんな効果が!「腰痛を予防」
脊椎の曲げ伸ばしは、腰の疲労回復につながり、腰痛を予防。柔軟性もアップします。
詳しい記事はこちら:腰痛予防に!ラジオ体操「体を前後に曲げる運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(6)
7.体をねじる運動
【意識するポイント】
体幹を鍛える回旋の運動です。両手の遠心力を使い、でんでん太鼓のように左右に上体をねじります。顔も腕と一緒に左右に振りましょう。骨盤とひざの位置は変えません。
こんな効果が!「ゆがみのない体に」
体幹の筋肉が鍛えられ、ゆがみのない体に整えられます。内臓の動きも促進されます。
詳しい記事はこちら:体幹の筋肉を鍛えてゆがみ知らず!ラジオ体操「体をねじる運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(7)
8.腕を上下に伸ばす運動
【意識するポイント】
体を垂直方向に動かして、腕と背中の筋肉をストレッチ。両腕を上げるときは、かかとをしっかり上げて、天井から指先を引っ張られているようなイメージで背中を伸ばします。
こんな効果が!「きれいな姿勢に」
垂直方向に伸びることできれいな姿勢に。瞬発力が向上し動きやすい体になります。
詳しい記事はこちら:キレイな姿勢作りに!ラジオ体操「腕を上下に伸ばす運動」のやり方/医師が解説!ラジオ体操(8)
9.体を斜め下に曲げ胸を反らす運動
【意識するポイント】
上体を斜め下に曲げて、太ももとお尻を気持ちよくストレッチ。股関節から曲げて、ひざの裏が伸びていることを感じます。胸を開くときは、斜めではなく正面を向くのがポイントです。
こんな効果が!「太もも・お尻がすっきり」
血行が促進され、脚のむくみが解消。下半身に脂肪がたまりにくい体質になります。
詳しい記事はこちら:太もも・お尻をすっきりさせる!ラジオ体操「体を斜め下に曲げ胸を反らす運動」のやり方/大人のラジオ体操・徹底解説(9)
10. 体を回す運動
【意識するポイント】
腰を中心に上半身を大きく回します。手の幅を変えずに、両腕の間に頭がある状態をキープすることで体がしっかり回ります。下半身は動かさず固定します。
こんな効果が!「ゆがみを解消」
左右に体を回すことで体のゆがみを整え柔軟性もアップ。腸の動きが促され便秘も解消。
詳しい記事はこちら:ゆがみを整え柔軟性アップ!ラジオ体操「 体を回す運動」のやり方/大人のラジオ体操・徹底解説(10)
11.両足で跳ぶ運動
【意識するポイント】
弾むように両脚でジャンプします。骨は重力刺激で強くなるので、ジャンプで骨に刺激を与えて鍛えましょう。ドスドス音がしないよう、肩の力を抜いてつま先で軽やかにジャンプします。
こんな効果が!「脂肪を燃やす」
骨を強くし、脚にバランスの良い筋肉がつきます。有酸素運動で脂肪を燃やす効果も。
詳しい記事はこちら:脂肪を燃やし骨を強く!ラジオ体操「両足で跳ぶ運動」のやり方/大人のラジオ体操・徹底解説(11)
12.腕を振って脚を曲げ伸ばす運動
【意識するポイント】
(2)の体操と同じ。腕を振りながらひざの曲げ伸ばしをする手足の運動。かかとを上げたまま腕を開きますが、なるべく左右のかかとをつけたままにすると、ふくらはぎに効果があります。
こんな効果が!「美脚&小尻に」
脚とお尻がキュッと締まります。自然と体幹も鍛えられ、全身の血行が良くなります。
詳しい記事はこちら:「かかと」がポイント!ラジオ体操「腕を振って脚を曲げ伸ばす運動」のやり方/大人のラジオ体操・徹底解説(12)
13.~大きく吸って吐いて~ 深呼吸
【意識するポイント】
(1)の体操と同じ動きですが、伸びの運動ではなく深呼吸です。深く呼吸をすることで、運動して興奮している体と気持ちが静まり、今日一日をスタートするためのやる気が湧いてきます。
こんな効果が!「ストレス解消」
深く呼吸をすることでストレス解消に。快眠効果も得られ、肌もきれいになります。
詳しい記事はこちら:ストレス解消&快眠効果!ラジオ体操「深呼吸」のやり方/大人のラジオ体操・徹底解説(13)
ラジオ体操Q&A
Q.常に呼吸を意識した方がいいですか?
A.あまり意識し過ぎると逆効果です
自然な呼吸が基本です。呼吸は意識し過ぎると疲れて、逆に体に悪いんですよ。「吸う」「吐く」を意識するのは、体を伸ばしたり、力を入れたりするポイントだけ。息を止めるほどきつい動きは体に合っていないので、自分の可動域に合った無理のない動きに調整しましょう。鼻呼吸が基本ですが、鼻だけで苦しいときは口を補助的に使います。
Q.ラジオ体操の主な効果は何ですか?
A.骨、筋肉、関節など全身をバランス良く刺激します
軽い動きから始まり、だんだん激しくなって、最後に深呼吸で終わるバランスの良い整理体操です。曲げる、ねじるなど腹部体幹の筋肉を刺激する動きもあります。人間の体は「動かして戻す」ことで体の可動域が大きくなり、見えない筋肉も鍛えられます。左右のバランスが整うことで、転びにくくなり、関節機能が保たれます。いいことずくめなんですよ。
Q.いすに座ったままでもできますか?
A.無理せず、自分ができる動きをやりましょう
元気よくテキパキ動くのが基本ですが、肩や脚が痛かったり、腰痛の人が無理をしたりすると逆効果。動く範囲でOKです。毎日続けることで、どんどん可動域が広がっていきます。特に下肢に筋肉がなかったり、ひざや腰を痛めていたりして立位を保てない人は、いすに座って行いましょう。紹介したラジオ体操と同じ流れで上半身の体操を行います。
モデル/中村格子 取材・文/米原晶子 撮影/齋藤ジン イラスト/祖父江ヒロコ