認知症予防の第一人者が教える「認知症を防ぐ12の方法」【まとめ】

50歳を超えると特に気になる「将来の認知症」。年齢とともに認知症になるリスクは上がり、65歳以上では7人に1人が発症するというデータがあります。しかし最近は、積極的に予防すれば発症を抑えられることが、国内外の研究で報告されています。そこで、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生に選んでいただいた「認知症を防ぐための12の方法」をご紹介します。

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ウォーキングのおともにはアロマペンダント!
※新型コロナウイルス感染症予防のため、屋外で近くに人がいる場合はマスクの着用が推奨されています

認知症予防の第一人者が提唱する予防法とは

「今年の春ごろから新型コロナウイルス感染症の影響で、自粛生活を強いられてきました。そのため、活動が減り認知症へのリスクが高まりつつあります」と日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生。

年齢とともに認知症になるリスクは上がり、65歳以上では7人に1人が発症するというデータがあります。

しかし最近は、積極的に予防すれば発症を抑えられることが、国内外の研究で報告されています。

そこで、認知症を防ぐために浦上先生が選んだ12の方法を紹介します。

その基本となるのが、認知症になる危険性を高めるという研究報告がある上の3つの病気を防ぐこと。

「認知症予防にはまず、食事や運動などの生活習慣に気を付けましょう」と浦上先生。

【認知症を防ぐ方法①】3つの病気を防ぐ

1.動脈硬化

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動脈硬化が原因で脳卒中を起こしやすくなります。脳卒中は血管性認知症のリスクを高めるので、食べ物に気を付けて運動を。

  • 塩分を控える
    • 血圧を上げない
    • 運動で脂肪を燃やす

2.糖尿病

糖尿病になると認知症の発症リスクが2倍になるとの報告があります。糖質を摂り過ぎないように注意し、運動して筋肉をつけます。

3.歯周病

歯周病菌が血管に入り込み脳に到達すると、認知症の原因物質がたまりやすくなります。歯周病を防ぐには、口腔内を清潔に保ちます。

詳しい記事はこちら:歯周病、糖尿病、動脈硬化...。認知症の危険性を高める「3つの病気」をご存じですか?

【認知症を防ぐ方法②】アロマオイルを活用

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認知症の予兆として、「昼食を食べたかどうか思い出せない」というような記憶障害が現れます。

「実はそれより前に『匂いが分からない』という嗅覚の異常が起こります。例えば、食べ物が腐った匂いに気が付かなくなるのです」と浦上先生。

嗅覚の異常が起こるのは、認知症の原因物質である「アミロイドβ(ベータ)」が脳にたまり、最初に嗅神経に障害を及ぼすためです。

やがて、嗅神経の近くにある記憶を司る海馬にダメージを与えて認知症に。

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アロマセラピーの効果とは?

① アロマオイルの香りが脳の嗅神経細胞を刺激する
② 嗅神経が再生する
③ 脳の海馬や神経細胞の機能が回復する
④ 脳の働きが活性化

詳しい記事はこちら:嗅神経を刺激して認知症を防ぐ「アロマセラピー」のススメ

【認知症を防ぐ方法③】ウォーキングをする

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有酸素運動は、脳の神経細胞を刺激するホルモンの分泌を増やして、認知機能を向上させる働きが期待できます。

気軽に取り組める有酸素運動に、ウォーキングがあります。

「1日のウォーキングの目安は30分から1時間。最初は30分から始めて、少しずつ時間を増やしていきましょう」と浦上先生。

ウォーキング中は歩数計をつけて、毎日の歩数をノートに記録すれば、歩数を増やすことが楽しみに。

やる気が出て、無理なく続けられる人が多いようです。

毎日ウォーキングできない場合も、認知症予防のためには、最低でも2日に1回は行うようにします。

ウォーキングをすることで体力や筋力の維持ができるので、認知症につながる「3つの病気を防ぐ」(糖尿病、歯周病、動脈硬化)ことにもつながります。

詳しい記事はこちら:1日30分から、最低でも2日に1回は実施して!「認知症予防ウォーキング」のススメ

【認知症を防ぐ方法④】手指と足指の体操

外出しなくても家の中で座ったまま行えるのが、手指、足指の体操です。

手と足の指を動かすことによって、手足の動きを司る脳の前頭葉を刺激して、脳を広い範囲で活性化させます。

この体操は、最初は少し難しく感じるかもしれませんが、繰り返し挑戦することも予防につながります。

●手指の体操
①と②を交互に繰り返します。
【1日の目安】10回を3セット

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① 両手の指を曲げ、左手は親指を立てて、右手は小指を立てます。認知症予防の第一人者が教える「認知症を防ぐ12の方法」【まとめ】 2009_P031_02.jpg

② 今度は左手の小指を立てて、右手は親指を立てます。

詳しい記事はこちら:脳を活性化して認知症予防! 座ってできる「手指&足指の体操」のススメ

【認知症を防ぐ方法⑤】質の良い睡眠

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私たちは睡眠中に、認知症の原因物質である「アミロイドβ」を脳から除去しています。

原因物質を脳に蓄積させないことが認知症の発症リスクを軽減させます。

研究結果によると、睡眠時間が短い人は認知症のリスクが高く、その一方で、寝過ぎても認知症になりやすいことが分かりました。

「睡眠時間は7時間前後が理想です。アロマオイルを香らせるなど、寝る前にリラックスすることで、よく眠れて質の良い睡眠が取れるようになります」と浦上先生。

また、日中に30分ほどの昼寝をすると脳がリフレッシュできます。

夜の睡眠を妨げないように、13時から15時の間の昼寝が最適です。

詳しい記事はこちら:7時間前後が理想です。認知症予防に「質の良い睡眠」のススメ

【認知症を防ぐ方法⑥】料理や園芸

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料理では、段取りを考えて素材を切って焼いたり、盛り付けたり、手際よく進める必要があります。

料理は手先だけでなく、脳も働かせながら行う複雑な作業です。

「認知症予防のためには、料理を作りながら使った道具を洗うなど、二つの作業を同時進行で行うようにします。手の込んだ料理を作ったり、レシピを見ながら新しい料理に挑戦するのも有効です」

詳しい記事はこちら:段取りを考え、手間をかけた喜びを得る...。認知症予防に名医が勧める「料理と園芸」

【認知症を防ぐ方法⑦】人と話す

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人と会って会話をするとき、相手の話している内容を理解し、自分で言葉を選んで返事をしなければなりません。

会話のこうしたやり取りが、脳の働きを活発にするのです。

国立長寿医療研究センターの調査では、社会とのつながりが多い人の方が、認知症になりにくいことが分かっています(下図参照)。


社会的なつながりが多いほど認知症のリスクが減る

社会的なつながりが多い人(5点の人)は、0~1点の人に比べて認知症の発症リスクが46%減。

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社会的なつながりの得点

「配偶者がいる」「同居家族との支援のやりとりがある」「友人と交流している」「地域グループ活動に参加している」「就労している」の5項目について、「はい」と答えた場合を1点、「いいえ」と答えた場合を0点として集計。合計点数が「0~1点」の人の認知症の発症率を1としたときの発症率。

出典:J Epidemiol Community Health,72(1),7-12.doi:10.1136/jech-2017-209811を基に作成。

詳しい記事はこちら:「社会的なつながり」が多いほど発症リスクは減少します。認知症予防に「人と会話する」ススメ

【認知症を防ぐ方法⑧】補聴器を使う

近年、難聴と認知症との関係について研究が進んでいます。

アメリカの大学の研究によると、難聴の程度が重くなるほど、認知症になるリスクが上がることが示されています(下図参照)。

難聴になると認知症のリスクが上がる

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聞こえが悪い人は、耳から脳に伝わる音の情報が減り、認知機能が低下してしまいます。

また、話が聞き取りにくいため、人との付き合いを避けようとすることも、認知症を招く要因に。

詳しい記事はこちら:近年、研究が進んでいます。認知症予防に「補聴器を使う」ススメ

【認知症を防ぐ方法⑨】絵や塗り絵

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認知症を防ぐには、日常生活ではあまり使わない脳の神経細胞を働かせるようにします。

そのためには、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を使って自分なりの作品を生み出す意欲的な「創作活動」が適しています。

創作活動の中でも認知症の予防効果が高いのが、絵を描いたり塗り絵をすることです。

「五感を働かせながら頭と手を使って試行錯誤するので、脳が広範囲に刺激されます。私が所属する日本認知症予防学会では、『絵を描くこと』を科学的根拠のある予防法に認定しています」と浦上先生。

詳しい記事はこちら:創作活動で、脳の神経細胞を働かせて! 認知症を予防する「絵や塗り絵」のススメ

【認知症を防ぐ方法⑩】楽器や歌

日常的に楽器や歌に触れていると、認知症予防に効果があることが分かりました。

日本認知症予防学会では「音楽療法」を科学的根拠のある予防法に認定しています。

「効果が高いのは楽器の演奏です。例えば、ピアノは右手と左手を別々に動かすことで、脳の認知機能を高めてくれます。ピアノが弾ける人は、これからも続けるようにしましょう」。

楽器の演奏にあまりなじみがない人は、カスタネットやタンバリンなどを曲のリズムに合わせて動かすだけで、脳への刺激になります。

詳しい記事はこちら:脳の認知機能を高めてくれます。認知症予防に「楽器や歌」のススメ

【認知症を防ぐ方法⑪】パズルで脳トレ

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「クロスワードパズルやナンプレ、ドリルなどに取り組めば、文字や数字に触れる良い機会となり、楽しみながら判断力や記憶力が鍛えられます」と浦上先生。

頭を使って指先を動かす「知的活動」は、認知症予防に効果があると考えられています。

問題選びは人によって好みがあります。

例えば、昔から数字が苦手だった人は、数学のドリルではなく、ストレスにならないようにほかのパズルやドリルを選びます。

『毎日が発見』にも、毎月とじ込み付録として「鍛脳ドリル」が付いています。

詳しい記事はこちら:将来の認知症を遠ざけるために!「パズルで脳トレ」のススメ

【認知症を防ぐ方法⑫】日記をつける

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認知症になると、一般的な「もの忘れ」とは異なり、昔の出来事は覚えていても、最近、自分が体験した出来事を忘れて、思い出せなくなることがあります。

日記を毎日、書く習慣をつけることで、「あとでこの体験を日記に書かなくては」と、脳が意識するようになり、記憶力の改善につながりやすくなります。

日記を書くときはその日一日を振り返るため、場所や時間を明確に認識する力も鍛えられます。

手書きをする作業は、文字を書いたり、忘れた漢字を辞書で調べたりして、手と脳を働かせることにもなるのです。

また右のポイントも意識しながら書いてみます。

「今日の出来事を今日のうちに書かないで、あえて2、3日後に思い出して書くようにすれば、脳がさらに鍛えられます」と浦上先生。

詳しい記事はこちら:認知症を遠ざけるために! 「手書きで日記をつける」ススメ

【まとめ読み】特集「認知症を防ぐ12の方法」記事リスト

取材・文/松澤ゆかり 撮影/木下大造 イラスト/落合 恵

 

<教えてくれた人>

日本認知症予防学会理事長
浦上克哉(うらかみ・かつや)先生
鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野教授。医学博士。日本認知症予防学会理事長。著書は『認知症&もの忘れはこれで9割防げる!』(三笠書房)など。

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認知症&もの忘れはこれで9割防げる!

浦上克哉三笠書房

今回の特集で認知症を防ぐ12の方法を教えてくださった浦上先生の著書。「好きなことや楽しいことで”脳の控え選手”を鍛える」「体を動かしながら頭を使う」「旅先で新しい体験と感動に出合う」など、認知症予防の方法が詰まった、わかりやすい一冊です♪

この記事は『毎日が発見』2020年9月号に掲載の情報です。

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