精神科医の和田秀樹先生に教わる「高齢者のうつ病を予防する7つのポイント」

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セロトニンを増やすには、「トリプトファンを含む食ベ物を摂る」「散歩をする」「睡眠を十分とる」「映画を観る」などの工夫が効果的。トリプトファンの1日あたりの目安摂取量は、体重1kgに対して4.0mg。体重50kgの場合、1日の目安は200mgです。主な食品100g当たりの含有量は、卵1300mg、かずのこ1300mg、大豆1200mg、乳製品1100mgなど。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年2月号に掲載の情報です。

セロトニンを増やす生活を心がける

これまで高齢者のうつ病について、あれこれとお伝えしてきました。高齢者のうつ病は、薬で治ることが多いという意味では、必要以上に恐れることのない病気ともいえますが、なかには薬がよく効かない人も1~2割はいますし、なったときの苦しさは経験した人しか分からないという話も医師としてよく聞きます。私自身、高齢者になった際に、もっともなりたくない病気の一つがうつ病です。

ということで、やはりならないに越したことがない病気ですし、認知症と違い予防法がないわけではありません。完全に予防できる病気というわけではありませんが、動脈硬化よりは高い確率で予防できます。

予防策の一つ目は、これまでずっと述べてきたように、セロトニンを減らさない、できれば増やす生活を心がけることです。

【1】食品でセロトニンの材料を摂るようにする
まずは、食生活です。セロトニンの材料は、トリプトファンという必須アミノ酸です。必須アミノ酸というのは、身体の中で作り出すことができないので、食事から摂らなければいけないアミノ酸です。トリプトファンは、通常のたんぱく質にも十分含まれるものですが、とりわけたくさん含まれているのが、かずのこ、鶏卵の卵白、かつお節、大豆製品、乳製品(無脂肪ヨーグルトを除く)、レバー、ナッツ類などです。

ということで、これらの食品をたくさん食べると、セロトニンが増えて、うつ病の予防になるし、不安な気分も楽になる、イライラしにくくなるということになります。ただ、残念なことに、これらの食品を食べることで血液中のセロトニンは増えますが、脳には血液脳関門というものがあり、血液中のセロトニンがそのまま脳に移行するわけではありません。もちろん、血液中のセロトニンが多いほうが脳に行き渡る可能性は高いと考えられますが、それだけでうつ病を予防するのは困難です。

一方、血液中のセロトニン濃度が低い場合は、どうしても脳内のセロトニン不足が起こりやすく、うつ病になりやすいということは確かなようです。ということで、食べ物でセロトニンを増やす、つまりトリプトファンの多い食事を摂るのは、賢明なことだと思います。

 

<教えてくれた人>

和田秀樹(わだ・ひでき)先生

東京大学医学部卒業。精神科医。ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)は59万部を超えるベストセラー。他、著書多数。

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『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』

(和田秀樹/KADOKAWA)

1078 円(税込)

幸福な高齢者になるには、65歳からおとずれる「老人性うつ病」の壁を乗り越えることが必須。30年以上にわたって高齢者の精神医療に携わってきた著者が教える「うつに強い人間になって、人生を楽しむための一冊」。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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