50代の「やる気が出ない」は要注意。『80歳の壁』和田秀樹さんに聞く、脳年齢を若く保ちうつを防ぐ方法

50代は、うつを発症しやすい年代です。その理由の一つが、脳内の神経伝達物質であるセロトニン不足。「最近やる気が出ない」などと感じたら、要注意。

セロトニンを減らさない工夫と前頭葉の活性化に努めましょう。

今回は、ルネクリニック東京院 院長の和田秀樹(わだ・ひでき)先生に「50代の思考」についてお聞きしました。

【前回】ベストセラー『80歳の壁』の和田秀樹さんに聞きました!「脳年齢を若く保つ方法」

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肉食&日光浴でセロトニン減少を防ぐ

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50代は、前頭葉の萎縮を防ぐとともに、セロトニンの分泌量減少を予防することが大事だと和田先生。

「セロトニン不足は、気力の落ち込みや意欲の低下を招きます。50代は心身の衰えを感じやすい年代。最近、やる気が出ないと感じるようになったら注意が必要です。セロトニンを生成するために赤身肉などのたんぱく質を積極的に摂る、日光を浴びるなどを意識するようにしてください」

「毎日が実験」と思って行動してみる

前頭葉が萎縮して老化すると、「意欲がなくなる」「感情コントロールがうまくできずに怒りっぽくなる」などの変化が表れます。

予防には、前頭葉の活性化が必要です。

「前頭葉が活発に働くのは、想定外の出来事に出合ったとき。同じことを繰り返すばかりの生活では、ほとんど活動しません。"毎日が実験"と考え、想定外のことに出合ったら前頭葉を鍛えるチャンスと思い、喜んで変化や問題と向き合うくせをつけましょう」

どんなに小さなことでも構いません。

やったことのないことに挑戦してみましょう。


【毎日1つ、10日間チャレンジ】
うつを防ぐには、意欲や感情をコントロールする前頭葉を老化させないことが重要。

いつもと違うことをして前頭葉を喜ばせましょう。

□ 入ったことのない店でランチをする
□ 映画館で新作の映画を見る
□ 読んだことのない著者の本を読む
□ 初めての場所に出かけてみる
□ とびっきり、おしゃれをする
□ カラオケで最新の曲を歌ってみる
□ 一人旅に挑戦する
□ 「 絵を描く」「俳句を詠む」「ブログを書く」 など、新しい趣味を始める
□ 作ったことのないレシピに挑戦してみる
□ 知らない言葉が出てきたら、すぐに調べる


脳について知ることで動脈硬化を予防

動脈硬化は、体のどこで起こるかによってさまざまな不調や病気を引き起こします。

「脳の動脈硬化が進むと、自発性が低下し、何もしないで一日中ぼんやりしたり、言われたことはできても自分からは何もしようとしなくなったりします」と、和田先生。

「何かを始めるのが億劫だな」と感じるようになったら、脳の動脈硬化のサインかもしれません。

病院で脳の健康状態を確認してみましょう。

医者の言葉はうのみにしない

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体に不調が起こると、医師の診察を受けるという人は多いでしょう。

そんなとき、心がけておきたいのが「医師の話をうのみにしない」ことだと和田先生。

本当に必要な医療かどうかを見分けるにはどうしたら良いのでしょう?

「50~60代ならば、インターネットで自分なりに情報収集する、不安ならば別の医師の見立てを聞くといった方法も。自分の健康は自分で守るという意識が大切です」

「〇〇だったのか」から「〇〇かもしれない」に思考をチェンジ

ニュース番組で人気のコメンテーターが時事問題を解説しています。

そのとき、あなたはどんな反応をしていますか? 

「へぇ、そうだったのか!」と感心しているようなら、要注意だと和田先生。

「"この人はこう言っているけれど、本当かな?"といった反応をしてこそ、前頭葉を働かせていることになります。 日常生活の中でも、"〇〇かもしれない"という思考をもつことで前頭葉が鍛えられます」

この先かかるお金について知る

将来、年金だけでは老後資金が足りないと不安に思う方もいるでしょう。

そういった人は、老後にどのくらいのお金が必要なのかを可視化してみるといいでしょう。

「万が一将来、要介護になった場合、どのくらいのお金がかかるか知っておく。それ以外のお金は、自分のために使うのがいいでしょう。それでも不安でお金を使えないという人も多いですが、年金をもらえる年齢であれば、病気になって入院をしても、国の保険制度を使えば支出は少なくてすみます。介護保険についても理解しておきましょう」


《知っておきたいもらえるお金、受けられるサービス》

年金生活者支援給付金
公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給されるもの。

介護保険
65歳以降、支援や介護が必要なときに利用できる制度。サービスの支給限度額は要介護度で異なり、要支援1で月額5万320円、要介護5で月額36万2170円など。自己負担額は1〜3割。

介護休業給付金
雇用保険の制度で、家族の介護をするために休職する場合、条件をクリアすれば受給できる給付金。月々の給料の67%を最大3カ月支給。ハローワークに必要書類の提出が必要。

参考:『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』(講談社現代新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)/著:和田秀樹

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/macco

 

ルネクリニック東京院 院長 
和田秀樹(わだ・ひでき)先生

東京大学医学部卒業。精神科医。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)は55万部を超えるベストセラー。他、著書多数。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。

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