【本作を第1回から読む】致死率は約4.6倍、およそ4分の1が未使用...チャイルドシートの「正しい使い方」と「ポイント」
『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』 (おると/KADOKAWA)第4回【全11回】
マッサージの効果から湿布の貼り方、薬の飲み方まで、私たちの日常には多くの医学知識が必要とされています。しかし、それらを正しく実践できている人は意外と少ないかもしれません。X(旧Twitter)で医療情報を発信し、フォロワー数12万(2024年2月時点)を有する話題の整形外科専門医・おると先生による『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』は、勘違いしがちな日常の中の医学知識を、丁寧に解説してくれます。自分の習慣は問題がないのか、一度チェックしてみましょう。
※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
首の骨を鳴らす手技「#ほね音」「#首ポキ」は、実は危険?
<Check>
・整体などの首をポキポキ鳴らす施術は危ないから気をつけて
・首ポキポキで不調が出たら、すぐ整形外科に!
整体やカイロプラクティックなどの治療院で、施術者が利用者の頭や首などに手をかけて、首をポキポキ鳴らす施術があります。「ああ、テレビやSNSで見たことがある!」という方も多いかもしれません。「あれってどうなの?」「( 整形外科的に) 大丈夫?」という相談は、しばしば外来でも遭遇します。
首を動かしたときにポキッと音が鳴る経験をしたり、さらには音が鳴ったあとに首の違和感などが改善したように感じたりしたことがある方は、意外と少なくないのではないでしょうか。これを「徒手的に再現して調子を整えよう」という発想から、整体やカイロプラクティックなどではしばしば手技として行われています。しかし中には、頚椎(けいつい)に対して急激な回転伸展操作を加える施術を行っているところもあります。
この手技はスラスト法と呼ばれ、海外発祥のカイロプラクティックにおける施術法になります。実はこのスラスト法については、2014年に米国心臓協会と米国脳卒中学会が「スラスト法が脳卒中を引き起こす可能性がある」との声明を、米医学誌「Stroke」に掲載しています。
また日本でも、1991年に厚生労働省が「頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある」との通達を出しています。
では、スラスト法はなぜ危険とされているのでしょうか?
前述した米医学誌に掲載された学会の声明では、「椎骨動脈解離(かいり)」が起こる可能性があると指摘されています。
椎骨動脈は私たちの脳に栄養を送るための血管の一つです。動脈はホースのような一層構造の管ではなく、内膜・中膜・外膜の三層構造になっています。このうちいちばん内側の内膜に傷がつき、内膜と中膜の間に血液が流れ込み、血管が裂けていく現象が動脈解離と呼ばれ、特に椎骨動脈に起こりやすいといわれています。