首の骨を鳴らす「首ポキ」が危険な理由。厚生労働省が警鐘を鳴らす「椎骨動脈解離」の発生リスク

椎骨動脈解離の症状

椎骨動脈解離が起こると、激しい頭痛が起こったり、狭窄(きょうさく)が強くなると一過性の脳虚血発作や、脳梗塞(のうこうそく)などを引き起こしたりする恐れがあります。また、動脈が完全に破けてしまうと、くも膜下出血などを起こし、致命的になる可能性まであります。椎骨動脈解離はスラスト法のような手技だけでなく、スポーツや交通事故、突然の動作、激しい咳などで首に瞬間的に強い負荷がかかった場合もリスクとなり得ます。

もちろん、スラスト法を施術された人間が全員、椎骨動脈解離を発症するわけではありませんが、そのようなリスクが少なからずあるということは、施術する側も、される側も知っておいたほうがいいでしょう。

もしこのような施術を受けたあとから強い頚部痛が出現したり、嘔吐(おうと)やめまい、麻痺などの症状が出てきたりした場合は、ただちに病院を受診してください。

ちなみに、「なぜ関節がポキポキ鳴るのか」ということについては、もともと有力とされる説が二つありました。一つは関節内の空気が弾けたり、移動したりして音が出るというもの。もう一つは、関節を引っ張ったり曲げたりした際に関節が陰圧(いんあつ)(外よりも気圧が低い状態)になり、そこに関節液が気化し、音がするというものです。MRIによる動画などでの検証の結果、現在は後者が有力であるとされています。

首の骨を鳴らす「首ポキ」が危険な理由。厚生労働省が警鐘を鳴らす「椎骨動脈解離」の発生リスク igakulifehack04_01.jpg

参考文献:Cervical arterial dissections and association with cervical manipulative therapy: a statement for healthcare professionals from the american heart association/american stroke association

 

おると
整形外科専門医。診療にあたりながら、自身の転職経験をもとにしたブログ「フリドク」やX(旧Twitter)を2018年より開始。正しい医療をわかりやすく発信するスタイルや世間のネットニュースについての専門医目線での解説、ニセ医療解説などが大きな反響を呼び、現在12万人を超えるフォロワーを有する(2024年2月時点)

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
PAGE TOP