毎年1000人以上が「凍死」している。室内にいても起こりうる「低体温症」の危険なラインとは

【本作を第1回から読む】致死率は約4.6倍、およそ4分の1が未使用...チャイルドシートの「正しい使い方」と「ポイント」

『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』 (おると/KADOKAWA)第3回【全11回】

マッサージの効果から湿布の貼り方、薬の飲み方まで、私たちの日常には多くの医学知識が必要とされています。しかし、それらを正しく実践できている人は意外と少ないかもしれません。X(旧Twitter)で医療情報を発信し、フォロワー数12万(2024年2月時点)を有する話題の整形外科専門医・おると先生による『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』は、勘違いしがちな日常の中の医学知識を、丁寧に解説してくれます。自分の習慣は問題がないのか、一度チェックしてみましょう。

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


毎年1000人以上が「凍死」している。室内にいても起こりうる「低体温症」の危険なラインとは 整形外科医が教える家族の身体を守る医学的ライフハック_記事3アイキャッチ.jpg

寒さに注意! 凍死は熱中症より怖い?

<Check>
・報道は少ないが、毎年1000人以上が凍死している
・熱中症による死亡者よりも多い年も
・凍死は屋外よりも屋内で起こりやすい

気温に関する死亡リスクというと、多くの人が熱中症を思い浮かべると思います。

しかし死亡リスクが高いのは、熱中症だけではありません。実は最近では毎年1000人を超える人が「凍死」しています。

厚生労働省の人口動態統計によれば、2018年の凍死者は1278人(熱中症による死亡者1581人)、2019年が1086人(同1224人)、2020年1054人(同1528人)、2021年1245人(同755人)となっており、熱中症の死亡者数を超える方が亡くなっている年もあります。

凍死というと、雪山での遭難などを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、凍死が多く起こるのは山岳遭難などの特殊な環境ではありません。

実際には、凍死は一般家庭の屋内での発症例が圧倒的に多いのです。

日本救急医学会が行った2018~2019年における低体温症疫学(えきがく)調査によれば、偶発的低体温症の患者1194人のうち、屋内での発症は実に73.4%を占めていました。

低体温症とは、寒さで身体の熱が奪われ、深部体温(直腸温、膀胱温、食道温、肺動脈温など)が35℃以下に低下した状態をいいます。低体温麻酔のように意図的に低体温とした場合と区別するために、偶発性低体温症とも呼ばれます。

低体温症の原因としては、次の4つが挙げられます。

①寒い環境
②熱喪失状態
③熱産生低下
④体温調節能低下

などがあり,これらが単独あるいは複合して発症します。

深部体温が35℃以下となると、身体が体温を維持しようとして、シバリングと呼ばれる身体の震えのような生理現象が現れます。気温が急に冷え込んできたとき、身体がブルブル勝手に震え出す経験をしたことがみなさんありますよね。

この段階では、まだ命に関わる症状ではありません。

しかし、深部体温がそのままどんどん下がると、シバリングも消失し、筋肉の硬直や脳機能の活動低下が起こってきます。呼吸系では呼吸数が低下し呼吸停止へ、循環系では頻脈から徐脈・心停止へと体温低下に伴い抑制的に働きます。

 

おると
整形外科専門医。診療にあたりながら、自身の転職経験をもとにしたブログ「フリドク」やX(旧Twitter)を2018年より開始。正しい医療をわかりやすく発信するスタイルや世間のネットニュースについての専門医目線での解説、ニセ医療解説などが大きな反響を呼び、現在12万人を超えるフォロワーを有する(2024年2月時点)

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
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