得意なところで勝負する
稲垣栄洋先生――すでに紹介したように、自然界で生物が生存するためには「ニッチ」と呼ばれる居場所が必要である。
生物は居場所をめぐって競争する。そして、居場所を確保した生物は生き残り、居場所を得られなかった生物は滅んでいくのだ。
まさに自然界はイス取りゲームである。
それでは、どのようにして居場所を見つければよいのだろうか?
苦手なところで勝負しても勝てるはずはない。誰かのマネをしたとしても、誰かに勝てるはずはない。
自分の得意なところで勝負するしかないのだ。
雑草はどこにでも生えるイメージがあるかもしれないが、じつは生える場所は決まっている。
よく踏まれる場所には、踏まれるのに得意な雑草が生えている。
よく草刈りされる場所には、草刈りに強い雑草が生えている。
よく草むしりされる場所には、草むしりに強い雑草が生えている。
どの雑草も自分に得意なところにしか生えていない。
「どんな場所にも生える雑草は強い」と言われるが、じつはどんな場所にも生えているわけではない。雑草が強く見えるのは、得意な場所だけに生えているからなのだ。
自然界は居場所を取り合うイス取りゲームである。
魚が陸上を走ろうとしても、陸を走る生き物には敵(かな)わない。陸を走る動物がどんなに泳ぐ練習をしても、泳ぎ回る魚には敵わない。
苦手なことを克服する努力をするよりも、自分の力が発揮できる「得意な場所」を探す方がいい。
どこにでも生えているように見える雑草でさえも、じつは、「勝負する場所」をわきまえているのだ。