50代からでも「長期投資」は強力な武器になる! 投資のプロが強くすすめる「2つの理由」

【本作を第1回から読む】50代が「新NISA」で取り組むべき「王道の商品」は? 初心者が知っておきたいたった一つの選択肢

『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』 (中野晴啓/PHP研究所)第4回【全4回】

資産形成は、50歳からでも遅くない? 2024年1月から始まった「新NISA制度」は一見、初心者に優しそうですが、じつは正しい知識がなければ「損をして終わり」になる可能性もあります。そんなリスクを減らすべく、なかのアセットマネジメント社長の中野晴啓氏が執筆したのが『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』。50代にターゲットを絞った入門書で、「新NISA制度」をフル活用するための基礎知識をしっかり学びましょう。

※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。


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資産形成に焦りは禁物

資産形成に焦りは禁物です。焦っていいことなどひとつもありません。それは、新NISAを使う場合も、50歳を過ぎてからの資産形成でも同じです。

最近は65歳定年制を導入している企業も増えているものの、50歳になると、そろそろ60歳での定年退職が見えてきます。

また、55歳くらいになると役職定年を迎え、役職を降ろされる企業もあります。すると、権限もなくなるし、給料も下がります。

さらに、60歳で定年を迎えてからも雇用延長によって65歳まで働き続ける人も多いですが、これまた給料が大幅に下がります。定年前に比べて5割程度下がるというケースも多いようです。

その現実を突き付けられて、「資産形成を急がなければ」と焦る人もいるでしょうが、大丈夫です。健康寿命を考えると、皆さんの老後は70歳以降です。50歳の時点では、まだ約20年あります。20年という時間があれば、十分に長期投資ができます。

なぜ焦りが禁物なのかというと、それによって取り返しのつかないミスを犯す恐れがあるからです。焦るあまりに、たとえばリスクの高い投資商品にたくさんのお金を注ぎ込んでしまい、その後の暴落で資産の大半を失ったというケースは、枚挙に暇がありません。最近のケースでいうと、「仕組債(しくみさい)」が代表的でしょう。この手の商品のリスクを理解せずに購入してしまうのは、心のどこかで「少しでも早く老後の資金をつくらなければ」という焦りがあるからだと思います。

長期投資をお勧めする理由①
世界の人口はまだまだ増え続けるから

資産形成は、長期でするのが基本です。

そういう話をすると、時々、このようにいって反対する人がいます。

「今のように変化の激しい時代に、20年後、30年後の世界がどうなっているのかなんて、誰にも分からないじゃないか」

「世界経済は確かに今まで成長を続けてきたけれども、それはあくまでも過去の話。これから先も今までのように成長できるという保証はどこにもない」

こうした考え方にも一理あります。この数年を見ても、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う経済活動の停止、ロシアによるウクライナ侵攻など、「100年に1度」ともいうべき異常事態がいくつも起こりました。そのような時代において、30年後の未来の確実性など保証できないという声が上がるのは当然でしょう。

長期投資は、世界経済が今後も成長し続けるという前提が信じられなければ、できません。

したがって、前述したような理由で、世界経済の将来の成長に期待できない人は、そもそも長期投資には向いていないと断言できます。

でも、世界経済が長期的に成長すると考えられる確たる根拠が、実はあるのです。

欧州、日本などの先進国を中心に見ると、確かに昔に比べれば経済成長率は落ちています。特に日本などは、少子・超高齢社会に突入して人口が減少の一途をたどっていますから、経済成長率が低下するのは仕方ありません。国内需要だけに応えている企業の場合、日本という国の経済成長率の低下に伴って業績が伸びなくなりますし、株価も低迷し続けるでしょう。

しかし、経済成長率が低迷している日本の企業でも、世界を相手にしているような企業は、どんどん伸びています。なぜなら、日本経済は停滞しても、世界経済はこれから先もどんどん伸びていく可能性が極めて高いからです。

その一番の根拠は人口です。日本の人口は減少していますが、世界全体で見れば、人口は増加の一途をたどっています。国連が公表している「世界人口の推移」によると、2011年の世界人口は70億7300万人で、70億人台に乗りました。2050年の推計値では、97億90万人まで増える見通しです。そして直近のニュースによると、2022年11月15日に世界人口は80億人を突破しました。

国連の推計によると、2080年代のどこかで世界人口は約104億人まで増加するそうです。そして、その後は減少するかもしれないということですが、そうだとしても、あと60年近くも世界人口が増え続ける見通しです。

人口が増えると経済が成長する理由

人口が増え続ける限り、経済は成長を続けます。なぜなら、人間は欲望を持った生き物だからです。欲望がある限り、少しでもいい服を着たいし、美味しいものを食べたいと思います。少しでもいい生活を送りたいと考えます。これが経済成長を促すエンジンになります。

このように人口が長期にわたって増加傾向をたどることが自明である限り、経済は成長し続けます。したがって、こうした世界経済の成長にお金を乗せておけば、しっかり資産は増えていくはずなのです。

長期投資をするうえでは、世界経済の成長をいかにして自分の資産運用に取り込んでいくかという点が大きなポイントになります。

デイトレーダーのように、さまざまな銘柄の株価をじっと凝視して、細かく売り買いを繰り返す必要は、どこにもありません。ただ単に、人口増加による世界経済の成長を反映するような資産に投資して、後はひたすら持ち続ければいいだけのことです。その対象になるのが、代表的なグローバル企業の株式であり、世界中の株式市場に分散投資する投資信託なのです。

ちなみに、株式の期待収益率は、大体、年5~7%程度です。世界的な人口増加に伴う経済成長が維持されている限り、株式に投資することによってこの程度の利回りが期待できます。

もちろん、株式市場は時に大きく下落することもありますが、大きく下落した後は、大概、大きく値上がりしています。こうした値動きの平均値が5~7%程度と考えてください。

大事なことは、世界経済の未来を強く信じ、短期的な変動(下落)を許容できる気持ち。そして、長期投資に合った金融商品で運用すること。この点にさえ注意すれば、誰でも長期投資で資産形成をすることが可能です。

 

中野晴啓(なかの はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 

1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、 2023年6月に退任。

2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)他多数

※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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