小島よしお「ピンで売れてやる!」グループ解散後に奮起したワケ。周りに気づかされた「自分の芸風」

変えられないものを受け入れる

稲垣栄洋先生――どんなに頑張っても、どんなに努力しても、自分では変えられないものがある。

植物にとっては、環境がそうだ。植物はどんなに頑張っても、周りの環境を変えることはできない。

ましてや植物は動くことができない。そこがどんな場所だったとしても、その場所に落ちたタネは、その場所で生きていくしかないのだ。

それでは、植物はどうするだろう。植物は「変えられないもの」は受け入れる。植物にとっては、環境は受け入れるしかないのだ。

そして、変えられないものは受け入れるが、変えられるものは変える。

自分で変えられるものは自分自身である。だから、植物は環境を受け入れて、自分を変えていくのだ。

植物は動物に比べると変化できる能力が高い。それは、植物が動けない存在であることも影響しているのだろう。

植物の中でも雑草と呼ばれる植物は変化できる能力が大きい。雑草と呼ばれる植物がアスファルトのすき間のような場所で花を咲かせることができるのは、変化できる能力が大きいからだ。

私たち人間は、植物と違って自由に動くことができる。

しかも人間は環境を変えることさえできる。雨が降らなくても、蛇口をひねれば水が出る。夏の暑い日には、クーラーのスイッチを入れて、冷蔵庫の冷たい飲み物を飲むこともできる。

しかし、現代社会に生きる私たちも、変えられない環境はある。

どこに住むのも自由だが、今の仕事や生活を捨てられるわけではないし、さまざまなしがらみもある。自由に生きているように見えても、じつは変えられないものもたくさんあるのだ。

そして、現代人にとってもっとも変えられないものは、「他人」だろう。

他人は、変えることはできない。まったくもって、思い通りにはならないのだ。

私たち人間も、変えられないものは変えられない。

そうだとすれば、どうすればよいのだろう。

植物と同じように、変えられないものは受け入れるしかないのだ。

そして、与えられた環境の中で変えられるものは、自分だけなのである。

ピン芸人としての小島よしおさんは、本人の希望したものではなかったかもしれない。しかし、ピン芸人としての成功は、変えられないものを受け入れることによって誕生したのだ。

 

稲垣栄洋
農学博士、植物学者。1968年、静岡県生まれ。静岡大学大学院教授。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に、『弱者の戦略』(新潮選書)、『生き物の死にざま』(草思社)などがある。


小島よしお
芸人。1980年、沖縄県生まれ。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年より、ピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」で大ブレーク。年間100本以上の子ども向け単独ライブを行い、“日本一子どもに人気のお笑い芸人”として活躍している。主な著書に、『おっぱっぴー小学校算数ドリル』(KADOKAWA)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)などがある。

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※本記事は稲垣栄洋、小島よしお著の書籍『雑草はすごいっ!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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