『「親がしんどい」を解きほぐす』 (寝子/KADOKAWA)第1回【全4回】
親に対するしんどさはご自身にとって"大切な気持ち"の宝庫かもしれない――
X(旧Twitter)のフォロワーが1万人を超える、臨床心理士・公認心理師の寝子さんは、著書『「親がしんどい」を解きほぐす』のなかでそう語ります。
「毒親というほどではないけれど、親と関わるのがちょっとしんどい...」
親との距離感にモヤモヤを抱えている人は多いはず。気軽に話せない親との関係、モヤモヤは、寝子さんによれば「自分の人生をしっかり歩んでいるからこそ生じるストレス」。
自分の気持ちを見つめ直し、具体的な対処法も示唆してくれる本書から、第4章「『親の言動のワケ』を知ることでモヤモヤを晴らす」を抜粋して紹介します。
※本記事は寝子著の書籍『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
親が生きた時代の価値観を知ると理解につながる
親との間に起きるストレスを考えるとき、子ども側である自分の気持ちだけでなく、親側の要因も理解できると、モヤモヤがさらにスッキリすることがあります。
親を理解しようとするとき、親が生きた時代がどういう時代であったのかを振り返ることで個別の理解の助けになります。
時代によるポジティブさと選択肢のなさ
私たちの親世代は、「団塊の世代」の高度成長を代表に、その下の世代も、景気の良い活発な時代を経験したことがあります。そのため、今よりも「将来はおおむね明るい」と安心感を抱くことができました。
社会の繁栄の体験と、将来への安心感が、自分に対するポジティブな評価につながっていることが多いように見受けられます。
一方で、今よりも画一的な価値観を教え込まれ、個別性はできるだけ排除し、多数派に従って生きたケースが多いという傾向も持ち合わせています。生き方や考え方に対して、多くの選択肢があった時代ではありませんでした。
将来は明るいと思え、選択肢がなかったことは、自分について考える必要がなかったことにつながります。
考えるという習慣がないため、かつて良しとされた価値観を考え直すことなく、今でも当時の価値観のまま子どもの人生に口を出してしまいます。
たとえば「つらくても我慢して今の仕事を続けるべきだ」と根性論を強固に唱えたり、「料理は手作りであるべき」などとこだわりを教え続けたりするなど、今の時代にはそぐわない生き方を子どもに強いていることがあります。
このような場合、親は自分が生きた時代の価値観を絶対だと信じて疑いません。そのため、どうがんばっても子ども側の事情や気持ちが伝わらないことになります。