焼鳥は「串打ち三年、焼き一生」だが唐揚げは......
しかし、なぜ最近唐揚げ店がここまで増加したのでしょうか。唐揚げがご飯のおかずだけでなく、お酒のつまみや子供のおやつとして徐々に広がってきていたこともありますが、拡大のきっかけはコロナ禍でテイクアウト需要が増加したことです。前述の日本唐揚協会の発表によるとコロナ禍前の2018年の店舗数は1408店舗と、2022年の3分の1です。いかにコロナ禍で唐揚げ店が急増したのかが分かります。なぜ唐揚げ店がここまで急増したのか? 理由はテイクアウトしやすいということだけではありません。まずは低コストで運営できることです。唐揚げ専門店であれば調理器具はフライヤーさえあれば成り立ちます。そのため、初期投資が少なくて済みます。一般的に飲食店を開業する場合、開業資金が1000万~2000万円必要と言われていますが、テイクアウト専門の唐揚げ店であれば300万円程度で開業可能です。なおテイクアウト専門店であればスペースも6坪あれば運営できると言われているため家賃もそれほどかからず、ちょうど良いタイミングで同じようなスペースで運営していたタピオカ屋の居抜き物件が出ていたわけです。また近年はウーバーイーツなど宅配専門の店舗いわゆるゴーストレストランも増加してきており、立地を考慮しなくて済む分、更に家賃を下げることができます。
もう一つの理由は、オペレーションです。唐揚げは飲食店のメニューの中でもオペレーションが簡単で習熟するまでの期間が短期間で済みます。例えば同じ鶏肉を扱う焼鳥は「串打ち三年、焼き一生」という言葉もあるくらい奥が深いです。店主としてお客様に提供できるレベルになるまで少なくとも数ヶ月の修業は必要とされています。更に仕込みの時間も長く、一般的には開店の3~4時間前から仕込みを始めなければなりません。一方で唐揚げは、美味しく揚げるコツなどは必要ですが温度と時間さえキッチリ管理すれば大きな失敗はありません。仕込み時間もたくさんの部位がある焼鳥と比較すると種類も限られており、それほど時間も掛かりません。
このような理由から近年唐揚げ店が急増しています。お隣の韓国では韓国風唐揚げである"韓国チキン"のお店が2022年時点で8万店以上も存在しています。それだけ唐揚げのポテンシャルは高いということですね。コロナも収束し、かつてほどのテイクアウトの需要は見込めなくなりますが。ここからが唐揚げの真のポテンシャルが試される時期でしょう。