「片付け」と聞くと、「物を捨てなきゃ...」と思っていませんか? 年末に向けて、新しく提案したいのは、無理をして物を捨てない「寄せる」片付け。思い出の物とともに、くつろげる家で新年を迎えましょう。整理収納アドバイザー1級を持つ、古堅純子さんに「寄せる」片付けについて教えていただきました。
無理して物を捨てない。「寄せる」片付け方
今年は新型コロナウイルスの影響で生活様式が一変し、価値観も大きく変わり、家で過ごす時間が増えました。
「いまの時代に合った片付け方は "物よりも先に部屋を片付ける"ということ。片付けというと、"物を捨てる"という考えが一般的ですが、物は無理して捨てなくてもいいんです。まずは、幸せに暮らすために、家にいるのが楽しくなるための片付けをしましょう」と新しい片付けを提案する古堅さん。
片付けたい場所を、物が何もない「更地」の状態に戻して、あまり使わない物を別の場所に「寄せる」ことから始めてみましょう。
《古堅式「寄せる」片付け3カ条》
① 迷ったら無理せず捨てなくていい
② 物の置き場所は生活に合わせる
③ ワクワクする景色が人生の糧に
【Before】
おもちゃや洗濯物など、物が散乱しているリビング。大きな物は畳んでしまうなど工夫をしましょう。
【After】「飾る」「置く」を意識 少しの工夫でくつろぎ空間
床に物を置かないのは、部屋を清潔に保つために必要なこと。それだけで景色が変わります。
「寄せる」片付け 3ステップ
いままでの常識を覆す古堅さんの片付けの3ステップを紹介。
片付けは、生活を快適にするための第一歩です。
①更地にして景色を変える
片付ける場所をいったん更地にして景色を変えることから始めましょう。「更地にする」とは「物をなくす」ということ。目の前の景色が変わり、必要な物が分かります。
②生活動線を見直す
日常の生活動線を見直すことはとても大切なことです。腰やひざへの負担の軽減にもつながります。毎日の生活の流れを考えて、物の置き場所を決めましょう。
③原因を移動させる
更地にして、動線を見直すといま、必要のない物が分かります。普段からあまり使わない物は収納棚や空きスペースを利用して「寄せる」場所に移動させましょう。
1.まずはテーブル周りから<ダイニング編>
いつも人が集う阿部さん宅。
ダイニングでのひと時を楽しむために、メインであるテーブルを更地にすることから始めましょう。
すっきりとした空間ができて景色が一変します。
【Before】出窓付近の物の多さが目立つダイニング。テーブルの上にも物がたくさん置いてあります。
挑戦してくれたのは...阿部敏恵さん(63歳)
美容師の阿部さん。子ども2人は独立し夫婦で暮らす。「親族や友達がよく集まるので、落ち着いた雰囲気の部屋にしたいです」。
【After】家具の配置を変えてすっきりとした空間に
[ポイント①] 見るだけでワクワクする空間を
飾り棚は美しくキープする
出窓の横にあった大切な飾り棚は、玄関から入ってすぐ目につく場所に移動。「全て磨いて、収納し直しました。食器を高さで揃えて収納をするだけで、美しい飾り棚に変身」。
詳しい記事はこちら:クワクする空間を!「すっきりしたダイニング」の作り方/物を捨てない「寄せる」片付け(1)
2.タテのラインを意識しましょう<キッチン編>
キッチンの片付けは"見せるところ"と"隠すところ"をしっかり分けることが重要。
「"見せる"と〝隠す"さえできれば、キッチンが明るく清潔になって料理を作るのが楽しくなります」。
[ポイント①] 食器を置く場所は使う頻度で決める
棚から食器や調理器具を全て出して、いちばん使う、たまに使うなど使用頻度で仕分けましょう。
【Before】湯飲みやグラス、小皿ばかりが並ぶ棚。ゴールデンゾーンの棚にこれはもったいない。
【After】食器棚には食器しか入れないという思い込みをなくす
左扉にお酒を置いたのはダイニングテーブルに近いから
コンロの後ろにある棚は食卓にも近い場所。「毎日飲むお酒やコーヒーは食器と一緒に入れると出し入れが楽で散らかりません。左扉が飲み物、右は食事ラインに分けました。左扉にお酒ラインを作ったのは食卓に近いからです」。
[ポイント②] コンロの周りは「出す」か「しまう」か
【Before】使った物が出しっぱなしに。物の定位置が決まれば使うたびに戻すことができます。
【After】よく使う物は「出す」たまに使う物は「しまう」
作業スペースと出窓は最小限の物だけ置いて
コンロとシンクの間の作業スペースは、極力物を置かないこと。「油で汚れた調味料や器具を使用前に洗うのは時間のロスです。棚や引き出しにしまって最低限の物だけ出しましょう。出窓も埃がたまるので、同様です」。
詳しい記事はこちら:「見せる」と「隠す」をしっかり分けて!「明るいキッチン」の作り方/物を捨てない「寄せる」片付け(2)
3.物の置き場所が重要!<リビング編>
床に物を置かないのがリビングの基本的なルール。
「くつろぐ場所は快適な空間が理想です。テレビ台や棚の上は"飾ってある"のか、ただ"置いてあるのか"を明確にすると片付きます」。
【Before】洗濯物、孫のおもちゃなどが散乱したリビング。「洗濯物を干しに、庭にも行きにくい」と阿部さん。
【After】落ち着かないリビングがくつろぎの空間にチェンジ!
[ポイント①] 散らかり防止にボックスを使う
乾いた洗濯物は箱に入れて移動する
「洗濯物は一時的に置く場合も、畳んでから移動するのもボックスを使うと便利です」。足腰への負担も軽減されます。
[ポイント②] 古いソファが新しく
シートに布を挟むだけで雰囲気が変わる
ソファを布で覆うのは、よく使われるワザ。このままだと、下に垂れたり、シワシワになったりとだらしない印象に。「布はシートの下に挟むだけで、すっきりとおしゃれになります」。
[ポイント③] 生活スペースは空けておく
つまずきの原因になる物は動線上に置かない!
庭に洗濯物を干しに行く阿部家。「おもちゃなどが邪魔をしています。家事をスムーズにするためにも床に物は置かないように」。
詳しい記事はこちら:物の置き場所が重要です。「くつろぎリビング」の作り方/物を捨てない「寄せる」片付け(3)
4.片付けの悩みを「寄せる」片付けで解決!
つきない家の悩み...。
「寄せる」片付けによって解決することができます。
悩み①:くつろぎたい寝室、湿気が多くカビに困っています
【Before】
ベッド周りに家具を密集させるのはNG。風の流れを考えた配置に変更しましょう。寝具もバラバラで部屋全体に統一感がなく落ち着きません。
【After】
ベッドとベッドの間に通路を作ることで、それぞれの場所への移動も楽になりました。寝具をブラウンで統一すると、落ち着いた雰囲気に。
《片付けポイント》
・家具の配置を見直す
・インテリアを統一する
・家具の圧迫感をなくす
「白い家具はご主人の部屋へ移動し、ベッドの隙間を空けて、通路を作りました。足腰の負担も軽減できます」。寝具も統一して落ち着いた雰囲気の部屋へチェンジさせています。
悩み②:テレビ台の上にケーブルが散乱しています
歩く妨げにならないように、コードや充電器などのケーブルはまとめて隠すのがおすすめです。「転倒の防止になるだけでなく、片付いた印象になるので、ぜひ挑戦してみてください」。
《片付けポイント》
・コードやケーブルはまとめる
・家具の後ろに隠す
・吊すのがより安全
家具の裏に吊すと、見た目がよい上に、埃もたまらない快適な空間ができあがります。
詳しい記事はこちら:くつろぎたい寝室にカビが...⁉ プロに聞いた「片付け」5つのお悩み相談
取材・文/中村三枝子 撮影/草間大輔