父が「病気になってから」ではなく、「まだ元気なとき」に遺言書の作成をお願いしたのは、
「亡くなる直前だと、父の死が現実味を帯びてくる(父が死を意識して、動揺しかねない)」
「仮に認知症などで判断能力がなくなった場合、遺言が残せない」
「相続をする子どもたちにとって、相続のことは尋ねにくい」
「家族に対する父の想いを残してほしい」
といった配慮からでした。
遺言書作成の依頼先は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、金融機関などです。
相続税対策なら税理士、権利関係の複雑な不動産がある場合は司法書士、相続トラブルの起きる可能性が高いときは弁護士、気軽に遺言書を作成したい人は行政書士など、それぞれの専門家によってメリットやデメリット、費用が異なります(父は不動産を所有していたため、司法書士に依頼しています)。
どの専門家に依頼すればいいかわからないときは、相続に精通するコンサルティングファームに相談するのがよいでしょう(コンサルティングファームであれば、弁護士、司法書士、行政書士、税理士が在籍しているため、適任者が見つかりやすい)。
遺言書の種類、つくり方は法律で定められていて、それ以外の方法で作成されたものは無効です。
「あの人は、生前にこう言っていた」といった口約束や、録音テープや動画を残していても、遺言としての法律上の効力はありません。
遺言には、大きくわけると、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類あります。
父が作成したのは、公正証書遺言です。
法律に詳しくない場合、自筆証書遺言だと不備が残り、認められないケースがあるからです。
【自筆証書遺言】
遺言者が自分で全文、日付、氏名を書いた遺言書。自筆が条件であり、代筆やテープへの録音は無効だが、平成31年1月13日以後は自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようになった。また法務局に作成した遺言を預けることもできる。遺言者がひとりで作成できるので、費用もかからず、簡単に作成できる。財産の情報が外部に漏れることもない。しかし、紛失や偽造のおそれがあり、内容に不備があると無効になる。
【公正証書遺言】
公証役場(公正証書の作成を行う官公庁)で作成してもらう遺言書。専門家が作成するため法的効力が強く無効になりにくく、紛失や偽造のおそれもない。ただし、財産の価格をもとに公証人手数料がかかる。