「遺言書」を作成する「3つのメリット」とは? 書き方や実例を学んで「相続トラブル」を回避しよう

規定どおりに相続が行われることは少ない

約6000件の相続案件を見てきて思うのは、「うちには財産がないから、遺言書なんて書かなくても大丈夫」「うちは兄弟仲がいいから、財産の分割で揉めることはない」と考えている人のトラブルが増えていることです。

前述したように、相続が発生した場合の「法定相続分」(誰が、どれだけの財産を受け継ぐか)は、民法で決められています。

ところが、現実には、「財産が不動産だと、きれいに分割できない」「親の面倒を見てきた子どもと、そうでない子どもが同じ配分でいいのか、といった心情的なわだかまりがある」「被相続人の中には、配偶者や子どもだけでなく、孫や親戚にも財産を残したいと考える人がいる」といった理由から、規定通りに相続が行われることはまれです。

したがって、次のような場合には、揉めごとが起きないように遺言書を作成して、「誰に、どの財産を、どれだけ譲るか」をはっきりさせることが大切です。


遺言書を残したほうがいいケースとは

・不動産など、分割しにくい財産がある
・法定相続人以外にも財産を譲りたい
・特定の人に特定の財産を指定したい
・夫婦の間に子どもがいない
・相続人がいない
・ 前妻(前夫)との間に子どもがいる
・社会的に意義のある団体に寄付をしたい


第3条 遺言者がこの遺言を作成する趣旨は、次の通りである。
遺言者は長年連れ添った妻花子の今後の生活が心配でならない。遺言者の財産は一人で築いたものではなく、妻花子の協力によるところが大きい。相続人長男〇〇および長女〇〇は第1条に定める相続を了解して、花子が幸福に暮らせるように協力してほしい。したがって、遺言者の意思を尊重し、遺留分侵害額請求などしないようにお願いする。


[公正証書遺言の例]

令和〇〇年第〇〇号
遺言公正証書
 本公証人は、遺言者〇〇太郎の嘱託により、証人〇〇、同〇〇の立会いのもとに、遺言者の口述した遺言の趣旨を筆記して、この証書を作成する。

第1条 遺言者は、その所有する次に掲げる不動産を含む
 一切の財産を遺言者の妻〇〇花子に相続させる。
 1 横浜市〇〇区〇〇一丁目1番1号 宅地165㎡
 2 前記同所所在
    家屋番号〇〇番
    木造瓦葺2階建居宅 1階80㎡ 2階50㎡
 3 〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の預金全部

第2条 遺言者は、この遺言執行者として、次の者を指定する。遺言執行者はこの遺言を執行するため、〇〇銀行〇〇支店の預金の解約、払戻、名義書換請求を請求する権限及びその他この遺言執行のために必要な一切の権限を有する。
 住所 横浜市〇〇区〇〇二丁目1番1号 
 職業 行政書士 〇〇
         昭和〇〇年〇〇月〇〇日生


 

清田幸弘

ランドマーク税理士法人代表税理士、立教大学大学院客員教授。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田幸弘税理士事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。

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※この記事は『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(清田幸弘/あさ出版)からの抜粋です。

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