誰にどう残せばいいの? 住田裕子弁護士が解説する「遺産の分け方の基本」/シニア六法(20)

相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。

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誰にどう残せばいい? 遺産の分け方の基本

遺産とは、亡くなったときにその人が持っていた財産です。

預金、株式、不動産など、プラスの財産も遺産ですが、借金などのマイナスの財産も遺産です。

また、亡くなったときにはすでに持っていなかった財産であっても、生前に子どもに渡したマイホーム資金、結婚資金、独立開業資金などは、遺産分割や相続税の計算をする際に「遺産の前渡し」(特別受益)であるとみなされて、遺産としてカウントしなければならない場合(持ち戻し)があります。


【この条文】
民法 第882条(相続開始の原因)

相続は、死亡によって開始する。


「法定相続人」「法定相続分」「遺留分」とは?

亡くなった後、その人の遺産を受け取る権利があることについて、法律で定められている人を「法定相続人」といい、それぞれがもらえる遺産の割合を「法定相続分」といいます。

自分の遺産を受け取る人やその割合を「法定相続分」のとおりにしたくない場合には、遺言書を書くという方法があります。

ただし、遺言書を作成する場合には、遺留分に注意しましょう。

遺留分とは、法律で定められた最低限の相続分のことです。

妻・子はそれぞれの法定相続分の2分の1を、親は3分の1を遺留分として持っており、遺言でもこの遺留分は侵害できません。

養子縁組は法定相続人ではなくなるのか?

他の夫婦の養子になっても、実の親との親子関係がなくなるわけではありません。

養親の両親からも実の両親からも、法定相続人として遺産をもらえます。

ただし、特別養子の場合は、実の親子との関係はなくなるため法定相続人とはならず、養親のみの法定相続人となります。

親権を手放した子どもの相続権はどうなるのか?

離婚して元配偶者に子どもの親権がいっても、親子であることには変わりはないので、法定相続人になります。

異母(異父)きょうだいの相続権は?

異母(異父)きょうだいも法定相続人になります。

ただし、片親だけ同じ(半血)きょうだいは、両親とも同じ(全血)きょうだいの半分しか法定相続分がありません。

夫婦のうち、夫が死亡し、子どもがいない場合

法定相続人と相続分は、夫の親が生きていれば妻が3分の2、夫の親が3分の1です。

しかし、夫の親が生きていなければ、妻が4分の3、夫のきょうだい分が4分の1です。

さらに、夫のきょうだいが亡くなっていれば、その子ども(甥、姪に当たる)が法定相続人になります(代襲相続人)。

きょうだいや甥や姪に相続させたくないなら、遺言書を作成することをお勧めします。

きょうだい、甥・姪には遺留分がないのです。


【その他の条文】
民法 第887条(子およびその代襲者等の相続権)

第1項 亡くなった人の子どもは、相続人となる。
第2項 子どもが先に亡くなっていた場合等は、孫が相続人となる。


民法 第889条(直系尊属およびきょうだいの相続権)

子どもも孫も、ひ孫もいない場合は親が相続人となり、親が先になくなっている場合はきょうだいが相続人となる。
きょうだいも先になくなっている場合には、甥や姪が相続人となる。


民法 第890条(配偶者の相続権)

配偶者は、常に相続人となる。


民法 第900条(法定相続分)

第1号 子どもと配偶者が相続人であるときは、法定相続分は2分の1ずつである。
第2号 配偶者と両親や祖父母が相続人であるときは、法定相続分は配偶者が3分の2、両親や祖父母が3分の1である。
第3号 配偶者ときょうだいが相続人であるときは、法定相続分は配偶者が4分の3、きょうだいが4分の1である。
第4号 同じ身分関係の相続人が複数いる場合は、均等割りとなる。ただし、片親のみ同じきょうだいの相続分は、両親とも同じきょうだいの2分の1である。


民法 第901条(代襲相続人の相続分)

第887条や第889条によって孫や甥や姪が相続人になる場合は、それぞれの親が本来受けるべきだった法定相続分のとおりとなる。
※相続放棄と相続の欠格事由、廃除には代襲相続の扱いが違います。


民法 第1042条(遺留分の帰属およびその割合)

第1項 きょうだい以外の相続人は、遺留分として、次のとおりの割合に相当する額を受ける。
第1号 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
第2号 前号以外の妻・子(孫)が相続人の場合 被相続人の財産の2分の1


ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。

【まとめ読み】『シニア六法』記事リスト

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住田裕子(すみた・ひろこ)
弁護士(第一東京弁護士会)。東京大学法学部卒業。現在、内閣府・総務省・防衛省等の審議会会長等。NPO法人長寿安心会代表理事。

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『シニア六法』

(住田裕子/KADOKAWA)

シニア世代にとって「老・病・死」は身近なものですが、そのうえで健康を維持し、トラブルをなるべく避けて穏やかに過ごしたいと望む方が多いと思います。介護トラブルやオレオレ詐欺に遭ったときの正しい対処法など、「老・病・死」に近づいたときのリスクと対応策が、とっても分かりやすく解説されています。法律を軸にパラパラとめくって、フンフンと頷ける…とっても「ためになる」一冊です!

※この記事は『シニア六法』(住田裕子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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