親から遺産を受ける、子どもたちへ遺産を渡す、どちらの相続の場合も「事前準備」が肝心です。準備をしていないと、トラブルの原因になったり、適切な節税策をとれなかったり...。そこで今回は相続のプロである税理士・清田幸弘氏が、父親の相続の際に感じた「相続の現実」をまとめた書籍『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(あさ出版)をご紹介。これから相続を迎えるすべての人に知ってほしい内容を抜粋してお届けします。
※本記事は清田幸弘著の書籍『相続専門の税理士、父の相続を担当する』から一部抜粋・編集しました。
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早めの相続対策は、じつは早めの介護対策でもある
有料老人ホームに入居するには、「初期費用」「月額費用」などのお金が必要です。
立地、設備、サービス内容などによって異なりますが、月額費用の相場は「10~50万円」ともいわれています。
かつては病院死比率が多く、「入院して病名がついて亡くなる」ケースが一般的でした。
ですが、特別養護老人ホームや有料老人ホームの普及とともに、施設死が増えてきています。
老後を迎えて施設に入るのは、もはや特別なことではありません。
充実した設備や介護サービスを利用するためにも、また、入居一時金や賃料を支払うためにも、早い段階で老後資金を確保しておく必要があります。
介護が必要になってから土地を処分するのでは、間に合いません。
父と私が積極的に資産の組み換え(土地の売却や、賃貸物件の建設)を行ったのは、「相続や贈与のため」であると当時に、「将来的に必要になる老後資金を用意するため」でもありました。
父が老人ホームに入居できたのは、土地を売却したお金と賃貸収入があったからです。
施設に入居してからも、父と相談をしながら、「土地を売って、そのお金で賃貸用マンションを買う」「古い賃貸物件を処分する」といった資産の組み換えを進めました。
古い賃貸物件の場合、賃貸収入は見込めても、それ以上の修繕費がかかることもあります。
ですから、収支のバランスが崩れる前に資産の組み換えを行いました。
たとえば、築50年のアパートを2棟取り壊し、整地にならしてから売却したこともあります。
「人生の最期の迎え方」は人それぞれです。
絶対的な正解はありません。
元気だったころの父は、「土地を残す」「受け継いできた土地を、次の世代に渡す」ことが家長の役割だと強く意識していました。
ですが、自らの「体力の衰え」と「都市近郊農家の情勢の厳しさ」を考えたとき、土地を処分してでも現金を残すことの必要性に気づいたのだと思います。