こんな人はぜひ作って。住田裕子弁護士が解説する「遺言」の基礎知識/シニア六法(21)

相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。

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意思を伝える「相続対策」としての遺言

遺言を作成しやすいように、民法が改正されました。

しかし、遺言としての法的な効力が生じるのは、民法で定められている方式にそって法律に記載された事柄、主として財産に関する事項だけです。


【この条文】
民法 第960条(遺言の方式)

遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。


遺言の方式の種類

普通方式 自筆証書遺言

財産目録以外の全文を遺言者が自ら手書きし、署名押印する方式の遺言書です。

証人に立ち会ってもらう必要はありませんが、亡くなった後に相続人等が家庭裁判所でその自筆証書遺言の「検認手続き」を申し立てなければなりません。

この財産目録については、パソコンの使用ができます。

一度作成しておくと訂正も容易です。

普通方式 公正証書遺言

証人2名以上の立ち会いのもと、公証役場所属の公証人が遺言者から聞き取った内容を遺言者の代わりに書く方式の遺言書です。

家庭裁判所での検認手続きの必要はありません。

特別方式 死の危険が差し迫ったときの危急時遺言

証人3名以上の立ち会いのもと、そのうち1名が危篤状態の遺言者から聞き取った内容を遺言者の代わりに書く方式の遺言書です。

書記役の証人は作成から20日以内に家庭裁判所でその遺言の確認の審判を申し立てる必要があります。

遺言のメリットなど

自筆証書遺言

民法の改正により自筆証書遺言の作成がより簡単になりました。

自筆証書遺言には、次のメリットがあります。

・ 費用がかからない

・ 誰にも知られずに一人で書くことができる

・ 何度でも書き直しができる。新旧で矛盾する場合は、日付の新しいものが優先する

・ 法務局に保管してもらうことができる

・ 財産目録は、手書きだけでなく、パソコンでも作成できる

公正証書遺言

一方、公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が聞き取ったうえで作成され、その後、保管もされます。

署名のみ自分でしますが、書けないときは公証人が代筆してくれます。

公証人の手数料は遺産の金額によりますが数万円かかります。

例えば、遺産の金額が、3千万円を超え5千万円までなら2万9千円、5千万円を超え1億円までなら4万3千円など、金額の増加に従って、手数料も高くなります。

また、公証人に出張してもらうこともできます。

その場合は公証人手数料が50%加算されるほか、公証人の日当2万円や交通費がかかります。

遺言書を作った方がよい人とは?

遺産分割をスムーズに進めるために、また相続を「争続」にしないためにも、遺言が「決め手」になるのは次のようなケースです。

生前に準備して遺言を作成することは、愛情であり、責任でもあり、必須です。

・ 再婚しており、前配偶者との間にも子どもがいる人

・ 子どものいない人

・ 子ども同士の仲が悪い人

・ 特定の法定相続人に特定の遺産をあげたい人

・ 法定相続人の中に遺産を多くあげたい人と、あまりあげたくない人が交ざっている人

・ 自分の面倒を見てくれた子どもとそうでない子どもがいる人

・ 法定相続人以外の人にも遺産をあげたいと考えている人

・ 不動産をいくつも持っている人

紛争の種になる遺言の付言事項とは?

付言事項には感謝の言葉を書きましょう。

また、自宅などを相続させる理由には、具体的で納得感があることを書きましょう。

恨み、しこり、えこひいきは紛争の種です。

絶対に避けましょう。

他にも、次のようなものは避けた方がよいでしょう。

×感情的で思い入れが強すぎるもの

「子どものときからかわいくてしかたがなかった」「学業も優秀で常に心の中で自慢に思っていた」など。

×人格的な非難

「結婚もせず自由気ままだった」「仕事も長続きせず、はらはらさせられ、借金の尻拭いばかりさせられた」など。

×比較する

「〇子に比べて△子は、あまり家のために尽くしてくれなかった」「一族・家族は皆、地元の一流大学に入ったのに、□男だけは......」など。

×細かすぎる指示で命令口調のもの

相続させる財産の使用方法、お墓や法事の在り方など。負担感が大きく嫌がられます。

×遺言による隠し子の認知

遺言での発覚は遺族に衝撃を与えます。「隠していてすまなかった」などの詫びの言葉があっても修羅場、愁嘆場です。


ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。

【まとめ読み】『シニア六法』記事リスト

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住田裕子(すみた・ひろこ)
弁護士(第一東京弁護士会)。東京大学法学部卒業。現在、内閣府・総務省・防衛省等の審議会会長等。NPO法人長寿安心会代表理事。

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『シニア六法』

(住田裕子/KADOKAWA)

シニア世代にとって「老・病・死」は身近なものですが、そのうえで健康を維持し、トラブルをなるべく避けて穏やかに過ごしたいと望む方が多いと思います。介護トラブルやオレオレ詐欺に遭ったときの正しい対処法など、「老・病・死」に近づいたときのリスクと対応策が、とっても分かりやすく解説されています。法律を軸にパラパラとめくって、フンフンと頷ける…とっても「ためになる」一冊です!

※この記事は『シニア六法』(住田裕子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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