親から遺産を受ける、子どもたちへ遺産を渡す、どちらの相続の場合も「事前準備」が肝心です。準備をしていないと、トラブルの原因になったり、適切な節税策をとれなかったり...。そこで今回は相続のプロである税理士・清田幸弘氏が、父親の相続の際に感じた「相続の現実」をまとめた書籍『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(あさ出版)をご紹介。これから相続を迎えるすべての人に知ってほしい内容を抜粋してお届けします。
※本記事は清田幸弘著の書籍『相続専門の税理士、父の相続を担当する』から一部抜粋・編集しました。
相続対策を「できるだけ早く」はじめたほうがいい理由
「遺産分割トラブル」と、「相続税負担」を軽減する
親と相続の話をする場合、「親の死」が前提なので、人によっては抵抗を感じます。
相続に関する話はデリケートであり、気心の知れた親子であっても、話しにくいものです。
親と相続の話をしておきたくても、なかなか切り出せずにいる方も多いと思います。
それでも、相続対策は、できるだけ早めにはじめたほうが得策です。
「相続のタイミングは、いつやってくるかわからない」「相続対策には、時間がかかる」「相続発生後(親が亡くなったあと)では、相続対策はできない」からです。
親(財産所有者)が健康を損ねてしまったあとでは、相続対策を検討するのが難しくなってしまいます。
【相続対策を早くはじめたほうがいい2つの理由】
(1)相続人同士のトラブルを減らすことができる
「誰に、どの財産を、どれくらい残したいか」、遺産分割のしかたを遺言書に示しておけば、相続人同士のトラブルを減らすことができます。
遺言書を残していない場合、相続人同士が話し合って財産の分け方を決めることになります。
相続人同士の利害が対立すると、遺産分割が難航することがあります。
【遺産分割】
各相続人に財産を分配する手続きのこと。被相続人の死後、相続財産はいったん相続人全員の共有財産になる。その後、遺産分割によって各相続人に分配される。遺産と、相続財産(財産)は同じ意味。
遺産分割で不動産を保有しているのなら、生前のうちに分割しやすい他の財産や金融商品に置き換えることで、遺産分割がスムーズに進みます。
(2)相続税を軽減できる相続
税の負担を軽くするには、生前贈与や控除制度の活用、相続税評価額の引き下げなどがあります。
評価額とは、わかりやすく言うと、「価格」のことです。
相続税を計算するには、財産の価値(財産がいくらになるか)を調べなくてはなりません。
相続税は、購入価格や建築費で決まるのではなく、相続税法や国税庁によって決められた「相続税評価額」(以下、評価額)を基準に計算します。
たとえば、現金を不動産に変えて相続すれば、現金で相続するよりも相続税評価額を引き下げることが可能です。
【相続税評価額】
財産の価値を決める場合、「財産評価基本通達」という評価基準で決める。この評価基準で決めた財産の値段が相続税評価額。