介護のプロが「一人っ子の遠距離介護はラッキー」だという理由。親と離れて暮らす一人っ子がほっとする言葉

【第1回から読む】柴田理恵「他人様に介護をお任せするのに、迷いがあった」介護のプロと語る「遠距離介護の始め方」

『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』 (柴田理恵/祥伝社)第4回【全6回】

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富山に住む一人暮らしの母が要介護となった、女優・柴田理恵さん。選んだのは「遠距離介護」でした。

少子高齢化、子ども世代の賃金の伸び悩みなど、自身の生活を維持しながら親の介護をどうすれば良いのか、悩める人は多いはず。
そんな人々に柴田さんが自身の経験に照らしながら、専門家と対話してできた1冊が、『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』です。

本書から、「介護のプロ」川内潤さんと柴田さんによる、【遠距離介護の始め方】をテーマにした対談をお届けします。

※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。


一人っ子の遠距離介護はラッキー

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川内潤さん(以下、川内):「(父・母は)そんな人じゃない。もっとちゃんとできるはず」と、子どもの考える理想の生活態度を親に押しつけてしまい、親の介護がつらくなる。じゃあどうすればいいか。

柴田理恵さん(以下、柴田):それです、問題は。

川内:親への不満や怒りがなぜ湧くかと言えば、変わってしまった、あるいは本来の自分を出すようになった親と、四六時中顔を合わせているから。だったら、親と離れて暮らしている子どもであれば、わざわざ親を引き取ったり、実家に帰って一緒に住んだりしなければいいんです。頻繁に実家に帰ったりするのもやめたほうがいい。

柴田:顔を突き合わせなければ、ぶつかりようもない(笑)。

川内:そう。一緒にいたら、「なんでお父さん、今日もお風呂に入らないの!」などと言わなくていいことも言っちゃいますけど、離れていれば、親が週2回しかお風呂に入ってなくても、そんなことわかりませんから。

柴田:だから、親とは物理的に距離をとる。

川内:それこそが親孝行の罠を逃れる一番の方法です。親との距離を近づけすぎると、「見たくない親の姿」に疲れ切ってしまい、やがて憎むようになりかねません。親子関係を破綻(はたん)させるくらいなら、距離を置いたほうがいいんです。

柴田:なるほど。ただ親のほうが、寂しさや心細さから「もっと顔を見せてほしい」と子どもに求めちゃう場合もありそうです。その場合はどうしたら?

川内:親が子どもに会いたいというのはごく自然な感情ですが、それを受け入れて帰省の頻度を上げてしまったら、結局、ぶつかってしまうだけです。だから距離をとる。それがお互いのためです。まずはそれを理解すること。それが何より大事ですし、実は一番の親孝行ではないかと私は思います。そうすれば、柴田さんのように、親の介護はプロにお任せしようと割り切ることもできます。

柴田:物理的に距離があれば、そうせざるを得ませんからね。

 

NPO法人となりのかいご代表理事 代表理事 川内潤さん
1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。14年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。厚労省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム事業」委員、厚労省「令和4・5年中小企業育児・介護休業等推進支援事業」検討委員。介護を理由に家族の関係が崩れてしまうことなく最期までその人らしく自然に過ごせる社会を目指し、日々奮闘中。著書に『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(ポプラ社)、共著に『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(日経BP)などがある。


柴田理恵(しばた・りえ)
女優。1959年、富山県に生まれる。1984年に劇団「ワハハ本舗」を旗揚げ。舞台やドラマ、映画など女優として幅広い作品に出演しながら、バラエティ番組で見せる豪快でチャーミングな喜怒哀楽ぶりや、優しさにあふれる人柄で老若男女を問わず人気を集めている。
また、こうした活躍の裏で2017年に母が倒れてからは、富山に住む母を東京から介護する「遠距離介護」を開始。近年は自身の体験をメディアでも発信している。
著書には、『柴田理恵のきもの好日』(平凡社)、『台風かあちゃん――いつまでもあると思うな親とカネ』(潮出版社)などのほか、絵本に『おかあさんありがとう』(ニコモ)がある。

※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。

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