【はじめから読む】柴田理恵「他人様に介護をお任せするのに、迷いがあった」介護のプロと語る「遠距離介護の始め方」
『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』 (柴田理恵/祥伝社)第3回【全6回】
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富山に住む一人暮らしの母が要介護となった、女優・柴田理恵さん。選んだのは「遠距離介護」でした。
少子高齢化、子ども世代の賃金の伸び悩みなど、自身の生活を維持しながら親の介護をどうすれば良いのか、悩める人は多いはず。
そんな人々に柴田さんが自身の経験に照らしながら、専門家と対話してできた1冊が、『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』です。
本書から、「介護のプロ」川内潤さんと柴田さんによる、【遠距離介護の始め方】をテーマにした対談をお届けします。
※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。
「親の新たな一面を知れてよかった」と思えることの大切さ
柴田理恵さん(以下、柴田):私も変わっていく母を見るのはつらかったし、イラッとすることもありましたけど、人間、年を取ればできなくなることもあるよねと思って、ああしろ、こうしろ、と口うるさく言うのをやめたんです。部屋が散らかっているのは、足腰が弱って、片付けたくても片付けられないのかもしれないですよね。高い場所に物を上げられないとか、重くて動かせないとか。
川内潤さん(以下、川内):おっしゃる通りで、足元が悪くなられているご高齢の方は、よく自分のまわりに円を描くように物を置くようになるんですけど、お母様はどうでした?
柴田:一緒です。母もそうでした(笑)。
川内:よくあるのは、それを家族が片付けちゃうんですね。「こんなにしちゃって」と。でも、親にとっては手の届くその円の世界こそが、自分が生活するのに都合のいい、実にシステマティックで効果的な物の配置になっているんです。それを片付けられてしまうと、何がどこにあるのか、たちまちわからなくなってしまう。
それで次にヘルパーさんが来たら聞くわけです。「ねえ、あなた、入れ歯の洗浄剤がどこにあるか知らない?」と。
柴田:私も片付けました(笑)。あるとき実家に帰ったら、ひどい散らかりようで、これでは誰か来たときにみっともないし、母も歩きにくい。それできれいに掃除をして、蹴躓(けつまず)いて危なそうな物は邪魔にならないところへ移したんですね。でも次に実家に帰ったら元の状態に戻ってる。ああ、母にはこのほうがいいんだなと思いました。
川内:乱雑に見えても、本人はそれで十分に用は足りているんです。
柴田:それを認めなきゃいけない。年を取ったら、いつお客様が来てもいいように、部屋をきれいにしておかなきゃ、なんて考えなくていいんですよね。それって実は親のためじゃなくて、子どもの都合というか、ただの世間体だったりもするし。