川内:おっしゃる通りです。その意味では、親と離れて暮らしている場合は、引き取ったり、帰ったりしなければ、自然と物理的な距離がとれます。
柴田:でも、あれはどうなんですか、見守りカメラ。一人暮らしをしている親が心配だからと家につける方がいらっしゃるじゃないですか。最近はCMでもよく見るし。
川内:あー、監視カメラですね(苦笑)。あれはやめたほうがいいです。一緒に暮らしているのとほとんど変わらなくなっちゃいますから。むしろ実際には離れて暮らしているので、かえって不安が募ったり、ストレスを溜め込んだりしかねません。
柴田:あぁ、そうか......。
川内:そもそも柴田さんは、自分の家に監視カメラをつけられて四六時中録画されて嬉しいですか? それも子どもに。
柴田:安心と思う人もいるかもしれませんが、私はちょっと......。
川内:ですから、そうしたIT機器の利用も含めて、離れて暮らす親とは距離をとったほうがいいです。
柴田:なるほど。
川内:よく、「一人っ子で遠距離介護は大変じゃないですか?」と聞かれるんですが、そういう方はたいてい頻繁に実家へ帰ったり、一人で何もかもやったりすることを前提にしているんですよね。でも、頻繁に帰れば親孝行の罠に落ちるだけだし、兄弟がいれば、いろいろ意見のすり合わせが必要な場面も出てきます。
その点、一人っ子なら親の介護をどうするか自分一人で決められます。意思決定のプロセスがシンプルなのは一人っ子の利点です。
柴田:一人っ子だとほかに頼れる兄弟がいればいいのにと思うんですよ。でも、兄弟がいたらいたで面倒なこともあるわけですよね。
川内:ですから、親と離れて暮らす一人っ子で遠距離介護を考えている方には、いつも「わざわざ帰らなければ親孝行の罠に落ちることもないし、自分だけで介護方針も決められる。あとは介護のプロにお任せすればいいんですから、大変どころか、むしろラッキーだと思いますよ」と、お伝えすることにしているんです。するとみなさん、憑(つ)き物(もの)がとれたように、ほっとした表情をされます。
柴田:それでいいんだと安心するんでしょうね。