介護のプロがやめたほうがいい、と言う「子による親の介護」。その理由に柴田理恵も「まさに親孝行の罠」

【第1回から読む】柴田理恵「他人様に介護をお任せするのに、迷いがあった」介護のプロと語る「遠距離介護の始め方」

『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』 (柴田理恵/祥伝社)第5回【全6回】

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富山に住む一人暮らしの母が要介護となった、女優・柴田理恵さん。選んだのは「遠距離介護」でした。

少子高齢化、子ども世代の賃金の伸び悩みなど、自身の生活を維持しながら親の介護をどうすれば良いのか、悩める人は多いはず。
そんな人々に柴田さんが自身の経験に照らしながら、専門家と対話してできた1冊が、 『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』です。

本書から、「介護のプロ」川内潤さんと柴田さんによる、【遠距離介護の始め方】をテーマにした対談を、全6回に分けてお届けします。

※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。


親の介護は最初から外部の支援を仰ぐべき

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柴田理恵さん(以下、柴田):「親の面倒は自分で見なきゃいけない」と思っている方が多いのかもしれませんね。必要以上に親の介護を背負い込んじゃって......。

川内潤さん(以下、川内):それが一番の問題でして、自分で何とかしようと思うあまり、すぐには外部の支援を受けようとしない人がいるわけです。いまの日本社会は、外部サービスの利用は肯定する一方で、「介護は家族で行なうべきで、それこそが親孝行」という意識も強いことが、私たちのNPOの調査でも浮き彫りになっています。

柴田:自分の手に負えなくなったら外部の支援を受けるけれど、それまでは自分で親の面倒を見たいという話をよく耳にします。

川内:はっきり申し上げますが、それはやめたほうがいいです。

柴田:負担が大きすぎる?

川内:もちろんそれもあります。

私たちの調査では、1日のうち介護に費やしている時間が「半日程度」が19.6%、「ほぼ一日中」が15.6%もいます。

でも一番やっかいなのは、子どもが自分で親の介護を始めると、親は子どもに依存するようになって、外部の支援を受けたがらなくなってしまうことです。他人に面倒を見てもらうよりそのほうが楽だから。

 

NPO法人となりのかいご代表理事 代表理事 川内潤さん
1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。14年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。厚労省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム事業」委員、厚労省「令和4・5年中小企業育児・介護休業等推進支援事業」検討委員。介護を理由に家族の関係が崩れてしまうことなく最期までその人らしく自然に過ごせる社会を目指し、日々奮闘中。著書に『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(ポプラ社)、共著に『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(日経BP)などがある。


柴田理恵(しばた・りえ)
女優。1959年、富山県に生まれる。1984年に劇団「ワハハ本舗」を旗揚げ。舞台やドラマ、映画など女優として幅広い作品に出演しながら、バラエティ番組で見せる豪快でチャーミングな喜怒哀楽ぶりや、優しさにあふれる人柄で老若男女を問わず人気を集めている。
また、こうした活躍の裏で2017年に母が倒れてからは、富山に住む母を東京から介護する「遠距離介護」を開始。近年は自身の体験をメディアでも発信している。
著書には、『柴田理恵のきもの好日』(平凡社)、『台風かあちゃん――いつまでもあると思うな親とカネ』(潮出版社)などのほか、絵本に『おかあさんありがとう』(ニコモ)がある。

※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。

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