私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!
◇◇◇
前の記事「液体になると冷える? 冷却パックとラムネの意外な共通点/すごい技術(24)」はこちら。
●カップ麺
日本最大の発明の一つといわれる、インスタントラーメンとカップ麺。これらが、世界の食文化さえ変えることとなった。
1958年(昭和33)、東京タワーが完成したその年にインスタントラーメンは誕生した。それから10年余り、今度はカップ麺が誕生する。おいしく手軽にその場で食べられるため、世界中で爆発的に普及していった。
カップ麺には、いくつもの不思議が詰まっている。例えば、なぜ麺が揚(あ)げられているのかというと、実はそこに、最大の発明がある。麺を揚げることで水分が飛び、保存ができるようになるのだ。また、麺のアルファ化が促進され、「お湯をかけて3分で食べられる」ようにもなる。アルファ化とは、人間が消化できるようにデンプンを転化することをいう。
ところで、なぜ「3分」なのだろう。1分で食べられる麺も作れるが、当然伸びるのも早くなる。食べている間に麺が伸びてしまうのだ。しかし、長く待たされてはイライラする。
その頃合いが「3分」なのである。3分には人間工学的な経験則が凝縮(ぎょうしゅく)しているのだ。
では、麺はなぜ縮れているのだろうか。それは、麺をそのまま揚げると麺同士がくっつき、揚げ上がりにムラができるからだ。麺を縮れさせれば、隙間(すきま)ができて均等に揚げられる。
ここで、カップ麺の容器を縦に切断してみよう。麺の下に隙間があることがわかるはずだ。また、上側の麺が密で、下側がそうでないことも見て取れる。なぜだろうか。何の工夫もせずに麺を容器に入れて3分間放置すると、中心部までお湯の熱が伝わらない。そこで、下に隙間を作って熱湯が対流しやすくしているのだ。こうして、熱い湯がまんべんなく行き渡ることになる。
カップ麺は具にも工夫がある。1950年代に軍の携行食として開発された「フリーズドライ」という技術を利用している。熱処理をしないですむため、食材の風味が生かされるのだ。
このように、カップ麺にはさまざまな技術が凝縮されている。そして現代、揚げない「ノンフライ麺」や、縮みのない「ストレート麺」の登場など、さらなる進化を続けている。
次の記事「誤差は0.5秒以下/日。水晶パワーを利用したクォーツ時計/すごい技術(26)」はこちら。