誤差は1日0.5秒以下。水晶パワーを利用したクォーツ時計/すごい技術

誤差は1日0.5秒以下。水晶パワーを利用したクォーツ時計/すごい技術 pixta_27715450_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!

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●クォーツ時計

現在、時計の主流といえば、クォーツ時計だ。クォーツの刻む時間は、スマホやカーナビなど、情報機器に不可欠となっている。

もっとも歴史のある時計は日時計だろう。太陽が南中(なんちゅう)するときを正午とし、1日の時を刻んだ。雨や曇りでは使えないが、近世まで、もっとも正確な時計であった。時計の針が右回りなのは、日時計の影が右回りであることに由来するといわれている。

17世紀には、オランダのホイヘンスが画期的な時計を発明する。振り子時計である。ガリレオ・ガリレイが発見した振り子の等時性(とうじせい)、つまり振り子が規則正しく往復するという特性を応用したもので、誤差は10秒/日ほどである。この振り子の動きをゼンマイで実現したものが機械式時計だ。これで、誤差は数秒/日になった。そして20世紀、クォーツ時計の発明により、誤差は一気に0.5秒以下/日にまで縮まった。

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クォーツ時計の「クォーツ」とは、水晶(すいしょう)のことである。水晶には不思議な性質がある。力を加えると電圧が発生し(圧電効果またはピエゾ効果という)、逆に電圧を加えると固有のリズムで振動する(逆圧電効果という)のだ。これは1880年、フランスのキュリー兄弟によって発見された(弟ピエール・キュリーの妻はキュリー夫人)。

クォーツ時計は、この水晶の性質を利用する。水晶の細片(さいへん)に交流電圧を加えると、逆圧電効果によって特定のリズム(1秒間に約3万回)で振動する。この固有の動き(固有振動)を電気信号に変え、時計の刻みに利用するのだ。

水晶の固有振動から電気信号を取り出す素子を水晶振動子と呼ぶ。これは現代において「産業の米」とも呼ばれ、電子機器に不可欠なものである。時計に限らず、コンピューターや動作検知センサーの重要な部品となっている。例えば、携帯電話には10個余りの水晶振動子が組み込まれているのだ。

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時計に話を戻そう。現代では、クォーツ時計よりもさらに正確に時を刻む時計も利用されている。セシウム原子時計である。その誤差は3000万年で1秒以下という驚異的なもので、日本の標準時を刻む電波時計にも利用されている。

  

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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