液体になると冷える? 冷却パックとラムネの意外な共通点/すごい技術

pixta_34224640_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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冷却パック

モノをこすったり叩(たた)いたりすると熱が出る。だが不思議なことに、冷却パックは「冷える」。いったいどうしてなのだろう。

手をこすると熱が出る。逆に冷たくなったら不思議だ。しかし、その逆の現象が起きる商品がある。「冷却パック」である。パックを折ったり、押しつぶしたりすると、熱が吸収されて冷えるのだ。

パックが周囲から熱を吸収する、つまり、「冷える」しくみを理解するには、理科の知識が必要だ。

化学反応には、発熱反応吸熱反応がある。通常は発熱反応である。ガスに火をつけてお湯が沸くのは、発熱反応を利用したものだ。しかし、例外がある。例えば、塩を水に溶かすと、その逆の吸熱反応が起こるのだ。

この吸熱反応を利用したのが冷却パックアイスパックとも呼ばれる)だ。パックの中には乾燥した硝酸(しょうさん)アンモニウムや尿素(にょうそ)、またはその両方の薬剤が水と分離されてパッケージされている。そのパッケージを押しつぶすと、分離されていた水と薬剤が混合して溶け合う。このときに吸熱反応が起こるのだ。

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吸熱反応は、物質を構成する原子や分子が周囲から熱エネルギーを奪い、束縛(そくばく)から解放されることで起きる。固体が液体に自然に代わるときに、よく現れる現象だ。この吸熱反応は珍しいようにも思えるが、身近なところで見つけられる。例えば、ラムネ、ハッカ入りの菓子、キシリトールガムなどだ。食べるとスーッと感じるのは、吸熱反応を舌が感知しているからだ。

吸熱反応は、江戸時代末期にはすでに知られていた。アイスクリーム製造に利用されていたのだ。当時、江戸には氷はあったものの、アイスクリームを作るための低温(マイナス10度以下)の状態は作り出せない。そこで、氷に塩を多量にかけてよく混ぜ、それでアイスクリームの入った容器を包むと、塩と氷が融けるときの吸熱反応で、マイナス10度が達成できたのだ。

 

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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