水蒸気の強力な加熱で脂や塩分を溶かし出す! スチームオーブンレンジ/身のまわりのモノの技術(30)【連載】

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2004年、「水で焼く」という刺激的なキャッチフレーズの新方式オーブンレンジがシャープから発売された。商品名は「ヘルシオ」。100度を超える水蒸気で調理するオーブンレンジで、脱油、減塩というヘルシー効果をうたった。

ヘルシオの人気に火がつくと、他社からも類似の製品が発売され、後に一般名称としてスチームオーブンレンジという名がつけられた。

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調理で用いる100度を超える水蒸気は過熱水蒸気と呼ばれる。加熱水蒸気を用いる料理法は業務用としては以前からあったが、家庭用オーブンで実現するには、ワット数や装置の小型化、安全面などで大きな障害があった。ようやく最近になって、一般家庭にも普及したのだ。「水で焼く」というしくみは、なかなか理解しにくいものである。「水は濡れるもの」というイメージが先行するからだ。しかし、それはあくまで100度以下の世界の話。100度を超えれば、水は水蒸気となり、いくらでも高温になる。この高温の水蒸気で調理するのがスチームオーブンレンジなのである。

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なぜ、水蒸気で温めると効率よく加熱できるのだろうか。その秘密は、水蒸気が水になるときに発生する「凝縮熱」にある。普通のオーブンのように空気から熱を伝えるのに比べると、凝縮熱は8倍ほども大きいのだ。そのため、急速に温度を上げることができ、素材を傷めることなく調理できる。また、温度が低い部分で水蒸気は凝縮しやすいので、加熱ムラも減る。さらに、過熱水蒸気は庫内の空気を追い出し、酸素の量を通常の0・5%以下にしてくれる。おかげでビタミンなど、酸素に弱い栄養の変質が抑えられる。

この方式の調理にはさらなるヘルシー効果がともなう。過熱水蒸気の強力な加熱が、食品内部の脂や塩分を溶か出してくれるのだ。ダイエットや高血圧を意識している人にはありがたい特徴だ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

 
この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。

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