配偶者のモラハラや不倫、義家族との関係、ワンオペ育児...。これらが起こる毎日の中に身を置いていると、結婚生活に限界を感じ、やむを得ず「離婚」という選択肢を思い浮かべてしまう人もいるのではないでしょうか。離婚って手続きが難しそうだし、お金や子どものことを考えると不安になりますが、適切なプロセスを踏めば、不安を吹き飛ばすことができるかもしれません。『増補改訂版 前向き離婚の教科書 イラストと図解でよくわかる!』(日本文芸社)の監修を手がける弁護士の森元みのり先生に、気持ちがラクになる離婚のヒントについてうかがいました。
取材・文=吉田あき
最近増えている「モラハラ」でも離婚できる?
森元みのり●森法律事務所副代表弁護士。東京大学法学部卒業。2006年、弁護士登録(東京弁護士会)、森法律事務所入所。以来、一貫して離婚問題に取り組む。著書に、『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』『2分の1ルールだけでは解決できない財産分与額算定・処理事例集』(共に新日本法規出版、共著)など
――約6年前に発売された『前向き離婚の教科書』の「増補改訂版」が刊行されました。改訂版が出たのはなぜですか?
森元みのり先生(以下、森元):おかげさまで順調に売れ続けているのと、2024年に「DV保護命令の対象の拡大」などの法改正があるからです。「お金」「子ども」「離婚の手続き」「離婚後の生活」など気になる項目ごとの要点を捉えているし、マンガや図解が挟まれていて、わかりやすい本に仕上がっていると思います。
――「DV保護命令の対象の拡大」とは、どんな内容ですか?
森元:いわゆる「モラハラ」ですね。これまで対象外だった「精神的な暴力」が保護命令の対象になったのは、大きな変化だと思います。
――モラハラが増えているということですか?
森元:増えていますし、声を上げやすくなりました。以前は裁判所も「証拠がないから」と相手にしてくれませんでしたが、精神的暴力は脳にすごいダメージを与えることがあり、身体的暴力よりも深刻なこともある、ということが社会に浸透し、やっとわかってもらえるようになりました。女性からの訴えが多いですが、共働き家庭が増えるなかで、妻からモラハラっぽくされているという男性からの相談も、月に1~2件はありますね。
――書籍に収録されているマンガでは、妻が夫から「オレが働いた金をどうして大事に使ってくれないかな」「おまえといるとイライラする」などと言われています。実際、どこまで言われたらモラハラなんでしょう。
森元:このマンガはモラハラ案件として紹介されていますが 、実際に我々が絡むような案件と比べると可愛いレベル...。ご本人にはつらいでしょうが、このくらいなら「性格の不一致」であり、話し合える範囲の相手です。
なかには、明らかにモラハラの被害者なのに「全部自分が悪い」と我慢している女性もいます。一方、モラハラの矛先が妻だけでなく第三者に向き、「妻はオレを慕っているのに弁護士がそそのかしたんだろう」と弁護士に懲戒請求をしてくる男性も...。モラハラをしているという本性を自分から明かしているようなものですが。モラハラで慰謝料が認められるケースは多くはありませんが、相手の非が明らかであれば認められることもあります。