何十年先も古びない家のデザイン。建築会社社長から見た「いいこだわり」と「避けたいこだわり」

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『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』 (平松明展/KADOKAWA)第5回【全6回】

住宅購入は、一生で一度の大きな買い物といっても過言ではありません。「後悔したくない」とは思っても、漠然としたまま足踏みしている方も多いはず。大工経験があり、建築士の資格をもつ建築会社社長・平松明展氏による『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』には、「安心安全に暮らせて老後に不安のない住まい」を手に入れるためのポイントが紹介されています。住まいに関する知識を得て、理想を現実にしませんか?

※本記事は平松明展著の書籍『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


何十年先も古びない家のデザイン

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住宅の価値のひとつにデザインがありますが、いいと思っていても後々になってしっくりこないようなことがあると残念ですよね。デザインは見た目だけでなく、耐久性や断熱性、省エネ性にも関係してきます。その理由を解説します。

シンプルデザインと機能美

自動車や家電製品のデザインは全般的にシンプルだと思いませんか? 長く使い続けるものなので、飽きのこないデザインという意図もあるでしょう。さらに無駄なものを省く、言い換えると意味のあるデザインにするという考え方があるのではないでしょうか? 自動車では風の抵抗を計算して流線形のボディラインをデザインすることもあるようです。これは機能美ともいわれますよね。住宅においてもこうした機能美が随所に見られます。また主観になりますが、シンプルだからこそこだわった部分が強調されてオリジナリティが輝くとも思います。

こだわりは人によって違うでしょう。私はいいこだわりと、避けたいこだわりがあると考えています。後者でいうと耐久性に支障が出てくるようなデザイン。例えば独特の凹凸のあるような建材だったり、装飾がついていたりする建材の外壁がありますが、凹凸や装飾部分に汚れがつき、それが漏水の原因になって壁自体だけでなくほかの部分にも悪影響を及ぼすと、家全体の耐久性が低下していくことになります。

外壁でいうと色にも気をつけたいですね。完成したてはきれいに見えても経年劣化で見た目が悪くなるものもあります。また、壁面ごとに違う色にすると、より雑多な印象になります。もし、色を複数使ったデザインにするなら、枠組みのある壁面のみにアクセントとして色をつける手法がよいと思います。統一感を保ちながらの主張になるからです。また、黒色は熱を吸収しやすいなど、断熱性との関わりもあります。

ちなみにですが、日本家屋で杉の板を焼いて加工した焼き杉というものを使用することがあります。木の素材をいかした色合いはとても馴染(なじ)みがいいと思います。耐久性や断熱性、通気性に優れており、古いものから学ぶことが多いと感じさせられる一例なので補足しました。

先ほど黒の壁は熱を吸収しやすいとお伝えしましたが、断熱性が優れていればデメリットにならないケースもあります。むしろ日射を想定した窓の設置のほうに目を向けたいところです。窓が不揃いに設置されたデザインはオリジナリティがあったとしても、長い年数で見ると飽きないかなあとも思ってしまいます。個人的な感想です。

ただ、機能美には直結しないのは確かです。冬に日射量を増やしたいのなら南側に大きな窓、夏の日射量を抑えたいなら小さくする、軒の下に近い高い場所につける、まったくつけないなどの選択があると思います。断熱性が高まり、光熱費を抑えられるデザイン設計、これこそ機能美だと思います。防犯や漏水などの観点からも考えるとよいでしょう。

 

平松明展
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。

※本記事は平松明展著の書籍『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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