何十年先も古びない家のデザイン。建築会社社長から見た「いいこだわり」と「避けたいこだわり」

設計時に決めておきたいトータルデザイン

突然ですが、小さな子どもが描く家の絵を思い浮かべてください。外壁と屋根は必ずありますよね。これは家のデザインとして理に適っていると思います。実は家のデザインを考える際、屋根が出発点です。

例えば間取りを先に考えると、屋根が複雑な形になることがあります。すると屋根のデザインの選択は限られてしまいます。道路、接道、駐車場、日当たりなどから間取りを決めていくように、屋根のデザインから間取りを決めていくのもひとつの方法だと思います。

屋根が極端に高い位置にある、低すぎる位置にあるというのも家のバランスを損ねる要素になります。一方から見たら気にならないけれど、別の位置から見ると不格好に見えるというケースもあります。これを解消するには模型やコンピューターの3D映像で確認する方法があります。もちろん確認させてもらえる住宅会社が信頼できますよね。

また見た目のデザインを重視して軒のない屋根の家を見ることがあります。それは雨による漏水を計算したうえでのデザインでしょうか? 日射の遮蔽を考慮しているのでしょうか? 仮にそのデザインがとても気に入っていたとしても住みにくさを感じ、余分な光熱費を払い、損傷した外壁を修復するようなことになると、デザインに対する思い入れが変わってきそうです。

庭のデザインについては先にお伝えしたとおりで、そこで照明を取り入れる提案もしました。照明は家のデザインに重要な部分です。玄関や外壁に設置した灯火、また庭の照明から外壁に映る光など、昼間とは違った印象を演出するのが照明です。もちろん費用はかかりますが、プラスアルファの要素として検討するとよいでしょう。

そのほかにも駐車場や玄関までのアプローチ、サンシェードやデッキなど住まいをデザインする要素はたくさんあります。高性能の家づくりを追求する際、デザイン要素も取り込めると楽しみが増えるでしょう。

ここでは外装についてお話ししましたが、内装も含めると注意点はどんどん増えます。例えば内壁と内壁が切り替わる部分とか、柱の入り方とかで、空間に〝線〟が存在します。その線が多くなればなるほど、雑多に見えるものです。これは設計時に確定しているデザインなので、あとから変えたいと思っても困難を極めます。

こうした事態を防ぐには先にも述べた模型や3D映像での確認はもちろん、いろいろな物件を見て回り、こだわりたい部分を増やしておくことが大切だと思います。住宅会社とのやり取りで要望を出せれば、トータルデザインのクオリティが高まるでしょう。

何十年先も古びない家のデザイン。建築会社社長から見た「いいこだわり」と「避けたいこだわり」 sumaitaizen_p171.jpg

 

平松明展
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。

※本記事は平松明展著の書籍『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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