「中古」より「新築」がお得!? 初期費用だけでは計れない、住宅購入時の「トータルコスト」の重要性

『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』 (平松明展/KADOKAWA)第1回【全6回】

住宅購入は、一生で一度の大きな買い物といっても過言ではありません。「後悔したくない」とは思っても、漠然としたまま足踏みしている方も多いはず。大工経験があり、建築士の資格をもつ建築会社社長・平松明展氏による『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』には、「安心安全に暮らせて老後に不安のない住まい」を手に入れるためのポイントが紹介されています。住まいに関する知識を得て、理想を現実にしませんか?

※本記事は平松明展著の書籍『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


新築と中古のメリットとデメリット

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初期費用だけを見てどんな住まいにするかを決めるのは、「ちょっと待った!」です。住み続ける過程で発生するランニングコストこそ把握しておく必要があります。新築と中古住宅を比較し、最適な住まいを模索しましょう。

中古住宅は建物の状態を把握しきれない

ここ数年の物価上昇は財布の紐(ひも)を締めますよね。住宅も同様で価格が下がるのを少し待ってみようという人もいるでしょう。しかし、住宅の価格は一時的に下がったとしてもすぐに上昇します。過去約60年で一時的に下がったのはリーマンショックなど大きな経済変化があったときのみ。そう考えるとできるだけ早く購入したほうが賢明だといえます。

先行き不透明だからこそ、少しでも初期費用を抑えたいという気持ちになるのはわかります。そう考えると、中古住宅は魅力ですね。ローン返済の期間を長くできない年配の方などには、有効な選択になるかもしれません。

新築と中古のどちらが適しているかは一概にいえませんが、ライフプランを考えたうえで判断してもらいたいです。というのもメンテナンスコストや光熱費などランニングコストが新築と中古では大きく変わってくるからです。ここで解説する新築は高性能住宅を指します。

新築と中古住宅を比較する前に、中古住宅のメリットとデメリットをお伝えします。メリットは初期費用を抑えられることと、物件がすでに存在しているので立地や周辺環境のほか、外装、間取りなどが把握できることです。しかし、それは表面的なことにすぎません。

基礎や構造、建材がどのような状態になっているかはわかりませんよね。壁の内側や床の下を目視することができませんから。また断熱性、耐震性なども同様です。仮にそうした性能を有していた物件だったとしても、築年数が長くなれば劣化していたり、機能不全になっていたりすることがあります。例えば漏水があった場合、そこから壁、床、柱などあらゆるところに悪影響が及びます。多いのが窓の性能が低くて結露し、カビやシロアリが発生してしまうこと。リフォームに1000万円以上を要することもあります。これは中古住宅の典型的なデメリットで、新築を買ったほうがよかったというケースも少なくないのです。

もし、中古住宅を選ぶ場合は、平屋のほうが安心です。構造面で懸念があっても家がつぶれにくいですから。鉄筋の住宅も同じことがいえます。それでも安全・安心というわけではないので以下の9点を注意して確認していただきたいです。

①床の傾きやシミなどの汚れ、②天井やその付近のクロスのシミ、③水まわりの収納、④設備、⑤配管、⑥間取り・配置・生活動線、⑦暖かさと涼しさ、⑧臭い、⑨駐車場の位置

物件にもよりますが、窓の位置や間取りを変えるのは大掛かりな工事になります。住宅の性能を下げてしまうこともあります。リフォームできることが限られていることも念頭において検討するとよいでしょう。

 

平松明展
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。

※本記事は平松明展著の書籍『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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