「若い頃から、日本だけでなく、国や言語や文化を超えて通じ合えるところに行きたいと思っていました。今回の舞台は、演出家が外国の方なので、すごくいいチャンス」。
年を取ることはマイナスばかりではない
――仕事に対する向き合い方なども変化はありましたか。
「いつ辞めてもいい」という覚悟はあるんです。
撮影は朝早かったり、夜遅かったり、寒かったり、暑かったり、大変ですから。
それでも続けているのは、同じことがないからかな。
毎回メンバーが違いますしね。
失敗することもあるけど、時々すごくうまくいくんです。
そうすると、「次は面白いかな? その次はどうかな?」と興味が湧いてきて、結局やってしまうんです。
とはいえ、この年になるとセリフを覚えるのも大変。
それでも、 何とか頑張って覚えています。
覚えないと、仕事がなくなるので必死です。
でもそれが、「一生懸命生きる」ことなんですよね。
そうやって続けていくうち、20代では分からなかったチェーホフの魅力が分かってきて。
『桜の園』の女主人ラネーフスカヤも、若いときにはできなかった役です。
役にはいままで生きてきた自分の全てが出ます。
だから、それがいまの私に相応(ふさわ)しい役として目の前にあるのなら、それを一生懸命やらせてもらえばいいんじゃないかなと。
そう考えると、年を取ることはマイナスばかりではないんですよね。
もちろん体力は落ちますけど、視力や聴力、記憶力が低下するのは、ある意味、救いだと思うんです。
余計なことは考えるな、大事なことだけ見なさい、と言われている気がして。
――一生懸命生きるには、体力も重要ですね。
最近は、できるだけ歩くようにしています。
車に乗っていると、足が弱ってしまいますから。
それと、40代後半から続けているのが乗馬です。
20分走れと言われたら大変ですけど、20分馬に乗るのはそれほど難しくありません。
それでも、ずっと体幹でバランスを取っているので、終わるとクタクタ。
いい運動になります。
乗馬にはもう一ついいことがあって、仕事ではいろんな人に会うんですけど、馬と一緒だと言葉を使わずに済むので、すごく気分がほぐれるんです。
だから、乗馬はおすすめです。
馬もかわいいですし。
取材・文/井上健一 撮影/吉原朱美 スタイリスト/坂本久仁子 ヘアメイク/CHIHIRO(TRON)