「母と娘の関係は、ちょっと冷たいぐらいがちょうどいい(笑)」作家・窪美澄さんインタビュー

2009年、40代で作家デビューして以来、『ミクマリ』や『ふがいない僕は空を見た』など女性を中心に多くの作品で人気を集めている窪美澄さん。息子さんが独立して「子育てという大きなことが一段落した」と語る窪さんですが、それまでに、ご自身の離婚や仕事と子育ての両立など様々な大変なことがあったそう。窪さんが、どのように乗り越えて「いま」があるのか、お話を伺いました。

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息子から見た家族の物語

――窪さんの小説は女性の心の内が繊細に描かれ、女性視点の「性」描写も支持されています。最新刊『ははのれんあい』は、ご自身の小説では珍しく普通の家族の「生」を正面から描かれていますが、10代の息子の視点から家族を描こうと思われたのは?

私自身の息子の独立が、大きなきっかけだったかもしれません。

私は離婚しているのですが、結果的に息子を振り回してしまったかなという節があって。

彼から見たら、私の人生って「迷惑」なんじゃないかと思うんですよ(笑)。

――作品中の息子・智晴(ちはる)くんに反映されているところは?

智晴が恋をするところがあるのですが、私は自分の息子が恋をしていると聞いて、「自分の産んだ存在が恋をしているって一体どういうことだろう!?」って天地がひっくり返るような驚きがあったんです。

それを書きたかったところはありますね。

人は成長して、恋をして、形を変えて命はつながっていくんだなと。

――独立された息子さんとは、どんな感じなんですか?

月に1回は帰ってきて、恋愛の話をしようとするので、「私は聞かないから」って言っています(笑)。

そこは自分で何とかしてくださいと。

味方になると思うなよと(笑)。

―いい距離感ですね。

26歳なので、いいアラサーじゃないですか(笑)。

子育てっていつ終わるのかなと思うんですよ。

息子の結婚相手に「さあ、どうぞ」って堂々と出せるような人に育ったのか、すごく不安なんです。

脱いだ靴下をちゃんと洗濯機に入れているのか(笑)。

彼を出品する前に、検品できていなかったとなると、子育ての終わりってどこなのかなと。

――息子さんを振り回してしまったとおっしゃっていましたが、智晴くんみたいなしっかり者の「上の子」に甘えてしまったという声も、世のお母さん方からよく聞きます。

でもね、振り回してしまったと同時に、大学出してあげたじゃんって思うんです(笑)。

そういう自覚のあるお母さんは人一倍、責任感が強いと思うんですね。

親としてやることは当然のこととしてやっていらっしゃるんですよ。

「それを当然と思ってできる人は、なかなかいないですよ」って言ってあげたくなります。

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作家

窪 美澄(くぼ・みすみ)さん
1965年、東京都生まれ。2009年に『ミクマリ』が第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。山本周五郎賞を受賞し、映画化もされた『ふがいない僕は空を見た』をはじめ、直木賞候補となった『じっと手を見る』『トリニティ』など著書多数。

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『ははのれんあい』

(窪 美澄/KADOKAWA)

1,700円+税

優しい夫と結婚し、長男が生まれ、幸せな家庭を築いていた由紀子。ところが、双子の次男・三男が生まれた頃から、夫婦の関係が変わり始める。壊れかけた家族を救ったのは、高校生になった長男だった――。現代の家族のほころびと再生を描く、希望の物語。

この記事は『毎日が発見』2021年3月号に掲載の情報です。

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