歯周病、睡眠不足、カビが、認知症を引き寄せる? 【認知症予防の新常識】

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『知らないと怖ろしいカラダの新常識100』 (川嶋朗:監修/アチーブメント出版)第4回【全5回】

さまざまなメディアを通して、健康情報に触れられる時代。けれど、ちまたに氾濫する情報の中には、真偽のほどが危ういものも少なくありません。

神奈川歯科大学大学院統合医療学講座・特任教授の川嶋朗先生が監修した1冊『知らないと怖ろしいカラダの新常識100』には、最新のエビデンスに基づいた、これまでの健康常識をアップデートする知識がいっぱい。
本書の中から、読者の関心が高い項目を抜粋してご紹介します。

※本記事は川嶋朗氏監修の書籍『知らないと怖ろしいカラダの新常識100』(アチーブメント出版)から一部抜粋・編集しました。


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既存の睡眠薬で認知症が予防できる可能性が

2023年3月、不眠症の治療に使われているスボレキサント(ベルソムラ)という薬が、アルツハイマー型認知症の予防に有用である可能性を示す臨床試験結果をまとめた論文がアメリカで発表されました。

この薬は脳の覚醒を維持するのに重要なオレキシンという脳内物質の働きを抑える作用を持っています。オレキシンには認知症を進行させる作用のあることが動物実験などで報告されており、これをターゲットとした認知症治療薬の開発が進められているのです。

認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症では、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、しばらくしてタウという別のタンパク質がリン酸化という変化を起こし、神経細胞が死ぬことで記憶力の低下などが起こると考えられています。したがって、アミロイドβとタウという2種類のタンパク質の蓄積を防ぐことで、認知症を予防できる可能性があるというわけです。

ワシントン大学セントルイス睡眠医学センターで実施された研究では、認知障害のない45~65歳の38人をランダムに、スボレキサント10mgを投与するグループ、同20mgを投与するグループ、プラセボを投与するグループの3つに分けました。そして、スボレキサントまたはプラセボを投与し、2時間ごとに少量の脳脊髄液を採取し、36時間後までのアミロイドβとタウのリン酸化レベルの変化を測定しました。その結果、就寝前にスボレキサントを服用した参加者はアミロイドβの濃度とタウのリン酸化が抑制されたことが示されたのです。

ただし、今回の研究は内服後、1日半以内の変化であり、長期的な認知症の進行予防につながるかは不明です。今後の研究に期待したいところです。

 

監修:川嶋 朗(かわしま・あきら)
神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授
総合内科専門医・医学博士

1957年、東京生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。東京女子医科大学大学院、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授・東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門医師を経て現職に。日本初の高等教育機関による統合医療教育を設立。漢方をはじめとするさまざまな代替・伝統医療を取り入れ、西洋医学と統合した医療を手がけている。西洋医学の専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。統合医療SDM クリニック院長。

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※本記事は川嶋朗 (監修)著の書籍『知らないと怖ろしいカラダの新常識100』(アチーブメント出版)から一部抜粋・編集しました。

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