歯周病、睡眠不足、カビが、認知症を引き寄せる? 【認知症予防の新常識】

脳を元気な状態に保つためのメカニズム

前述したように、「タウ」は脳に蓄積して、神経細胞の死を招き、認知症の原因となるタンパク質です。タウを脳内から効率良く除去し、過剰な蓄積を防ぐことができれば、認知症の治療や発症予防も可能になると考えられてきましたが、脳からタウが除去されるメカニズムは十分にわかっていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科の石田研究員らの研究グループは慶應義塾大学医学部との共同研究で、脳の細胞外での体液の流れに着目しました。研究チームはマウスを用いた実験で、脳内の老廃物を除去するグリアリンパ系(グリンパティックシステム)の仕組みによって、タウタンパク質が脳内から脳脊髄液に移動し、その後、頚部のリンパ節を通って脳の外へ除去されていること、またこの過程にアクアポリン4というタンパク質が関与していることを明らかにしました。さらにアクアポリン4を欠損し、脳からのタウの除去が低下しているマウスでは、神経細胞内のタウ蓄積が増加し、神経細胞死も助長され脳が顕著に萎縮することがわかりました。

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この研究で、アルツハイマー型認知症をはじめとするさまざまな認知症性疾患の原因となるタウが、脳から除去されるメカニズムが初めて明らかになりました。タウの除去機構を促進することができれば、タウの蓄積や神経細胞死を防止し、さまざまな認知症の予防や治療法の開発につながることが期待されます。

 

監修:川嶋 朗(かわしま・あきら)
神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授
総合内科専門医・医学博士

1957年、東京生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。東京女子医科大学大学院、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授・東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門医師を経て現職に。日本初の高等教育機関による統合医療教育を設立。漢方をはじめとするさまざまな代替・伝統医療を取り入れ、西洋医学と統合した医療を手がけている。西洋医学の専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。統合医療SDM クリニック院長。

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※本記事は川嶋朗 (監修)著の書籍『知らないと怖ろしいカラダの新常識100』(アチーブメント出版)から一部抜粋・編集しました。

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