この夏は、マスクを手放せないなかでの熱中症対策が欠かせません。「新しい生活様式」に合わせた正しい対策法で、元気に暑さを乗り越えましょう。帝京大学医学部教授の三宅康史(みやけ・やすふみ)先生に、「熱中症を予防する夏の新習慣」について伺いました。
屋内、屋外にかかわらず熱中症は起こります
[危険1]買い物などの外出中
・日差しを直接浴びる
・地面からの照り返し
[危険2]ガスコンロでの加熱調理中
・火を使うことで高温多湿に
・風通しの悪い環境
[危険3]畑仕事や草むしりなどの作業中
・ビニールハウスなどの高温・多湿の環境
・トイレが近くにないので、ついつい水分補給を控える
・同じ姿勢での長時間労働
[危険4]温度や湿度が高くなっている室内
・直射日光が差し込む
・扇風機だけでの対策
最近、こんなことありませんか?
□ 夏でも汗をかきにくい
□ 以前と比べて 食事の量が減った
□ トイレが頻繁にならないよう、水分摂取は控えめにしている
□ 水分を摂るのは、のどが渇いたときだけだ
□ 昨年の同時期と比べて、外出の機会が減っている
□ エアコンは 体に良くないので、なるべく使わない
一つでも当てはまったら要注意。熱中症予防対策を見直して!
感染予防にはマスクが効果的。でも熱中症のリスクは高まる?
マスクを着用することでの熱中症のリスクを心配する声もあがっています。
そこで、三宅康史先生に「新しい生活様式」での熱中症のリスクと予防策を伺いました。
「マスクの着用でこの夏、熱中症患者が増加するかというと、普通に生活している分には考えにくいでしょう。マスクをすると、呼気によって体から失われる水分が抑えられ、脱水になりにくくなります。また、湿った空気を吸うことでのどが湿気を帯び、感染症対策という意味では効用があります」
では、マスク着用時の注意は?
「たとえ涼しい場所であってもこまめに水分を摂る、人との距離を十分にとれる場合は適宜外すといった工夫を。冷房の効いていない場所では、冷たい水で水分補給をする、休憩時にはマスクを外して冷たい空気を吸い、体を冷やすことで、熱中症を防ぐことができます」。
熱中症はこうして起こります
暑いとき
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体温が上昇する
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血液の流れが滞る、体に熱がたまる ▼
さらに体温が上昇
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熱中症が起こる
詳しくはこちら:「夏場のマスク」でリスクは...? 医師に聞いた「熱中症」が起こる仕組み
体温が上がると、なぜ血液の流れが滞るの?
体内で熱くなった血液は毛細血管へ広がり、その熱を体外に放出して血液の温度を下げ、冷えた血液が体内に戻ることで体を冷やします。
その結果、熱を運ぶための血液が減少。
また、汗をかくことで水分量も減少します。
これらの作用で熱を運び出す血液そのものが減り、効率よく熱を逃がせなくなるのです。
では、以下で詳しく見てみましょう。
1.体内で発生した熱は、血液にその熱を移します
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2.熱を放出して体を冷やします
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3.体が熱くなると皮膚が赤く見えるのは、体表近くの血流を増やして血液を冷やしているから
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4.また、汗をかくことで体内の水分量が減ります
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5.血管や脳、内臓へと行きわたる血液量が少なくなります
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6.熱中症の症状が発生!
詳しくはこちら:熱中症や脳梗塞の原因に! 体温上昇で血液中の水分が減る「ドロドロ血」の怖さ
【熱中症予防の新習慣1】距離を保てばマスクは外してOK!
マスクを着けているときは...
【こまめな休憩を】
外出時は、通常よりも休憩の回数を増やしたり、時間を長くします。休憩の際は、人と十分な距離をとった上で、マスクを外します。
【暑さを避ける】
買い物や散歩は、暑い時間帯を避けて行います。また、日中に外出する際は、できるだけ日陰を選んで歩くようにしましょう。
【運動は控える】
暑い時間帯の屋外での運動は避けるのが基本。涼しい時間帯に散歩をする、屋内で筋力トレーニングをするなどの工夫を。
詳しい記事はこちら:距離をしっかり保てれば「マスク」は外してOK!/熱中症予防の新習慣(1)
【熱中症予防の新習慣2】水分はちょこちょこ摂るのが正解
食事時は水やお茶を飲みます。
また、午前10時や午後3時など、時間を決めて水分を多めに摂るよう意識を。
マスクをしているときはさらにこまめな水分補給を。
6:00 朝起きてすぐ
7:00 朝食時に
10:00 家事の合間に
12:00 昼食時に
15:00 お茶の時間に
18:00 夕食時に
20:00 お風呂の前後に
22:00 寝る前に
2:00 のどが渇いて目が覚めたとき
詳しい記事はこちら:のどが渇く前に「コップ半分の水」を飲みましょう/熱中症予防の新習慣(2)
【熱中症予防の新習慣3】家の中は温度28℃、湿度60%が目安
●風通しを良くする
風のある日は窓を開けて換気をし、室内に熱がこもらないようにします。ただし、最高気温が30℃以上の日は、換気をするとかえって室温が上がるので注意を。
●エアコンや扇風機を使う
冷房や扇風機を利用し、室温を26~27℃に保ちます。寝るときもエアコンは切らずに26~27℃を維持。室温が28℃を超えないように気を付けます。
●窓からの日光を遮る
すだれやブラインド、緑のカーテン、日差しを遮断するフィルムなどを利用して、日光が直接部屋に入らないようにします。
●打ち水をする
打ち水をすると、水が蒸発するときの気化熱で地面の温度が下がります。マンションは、ベランダに打ち水をすると効果的。朝や気温が下がる夕方に行います。
詳しい記事はこちら:家の中での熱中症予防は「温度28℃・湿度60%」が目安です/熱中症予防の新習慣(3)
【熱中症予防の新習慣4】体を動かして、汗をかく工夫を
ちょこまか動いて暑さに強い体になる
【散歩で】
散歩は、気温が下がる時間帯を選ぶ
●日陰の多いコースを選ぶ
●帽子や日傘を使う
●のどが渇く前に水分を補給
【自宅で】
家事や趣味などでとにかく体を動かす
●ストレッチ
●モップがけ・拭き掃除
●庭いじり
【集合住宅で】
階段をこまめに上り下りする
●ゴミ出しへ
●買い物から帰ってきたら
詳しい記事はこちら:涼しい時間の散歩が効果的。「汗をかく」熱中症になりにくい体づくりを/熱中症予防の新習慣(4)
【熱中症予防の新習慣5】高齢の親には、毎日電話をかける
電話をかけるのは、いちばん暑い午後2時
離れて暮らす高齢者の熱中症予防対策としてすぐにできるのは、電話をかけること。
「例えば、室温が最も高くなる午後2時に電話をして、エアコンをつけているか尋ねます。つけていなければスイッチを入れるよう促し、さらに2~3時間後に電話をして、エアコンがついているか確認してください」(三宅先生)。
夏支度ができているか、コレを確認
□ 洋服や下着は夏ものになっているか
□ 寝具は冬布団のままになっていないか
□ エアコンはすぐに使える状態になっているか
□ エアコンの設定は冷房になっているか
詳しい記事はこちら:高齢の親には毎日電話を!/熱中症予防の新習慣(5)
熱中症になってしまった時の対処法
体を冷やして水分補給。心配なときはすぐに助けを
夏場に、家族や周りの人の体調が悪くなったときは、熱中症を疑ってみる必要があります。
症状は、めまいや失神、筋肉の硬直、大量の汗、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感などさまざまあります。
熱中症は、正しい応急処置を施せば、重症化を回避できます。
まずは、左の手順で応急処置を行うことが先決。
特に、「体を冷やす」「水分補給」を最優先に行ってください。
そして、万が一、「意識がはっきりしていない」「体を動かすことができない」「自力で水を飲めない」といった場合は、早急に救急車を呼びましょう。
医療機関へは、倒れたときの状況を知っている人が付き添い、発症時の状態を伝えるようにします。
最初、意識がはっきりしていて軽症に見えても、急に症状が悪化することも。
すぐに目を離さず、様子を見守りましょう。
首、脇の下、脚の付け根、大きな血管が通るところを冷やす
体を冷やして体内にこもった熱をとるには、太い血管が体の表面を通っている場所を冷やすのが効果的。保冷剤や氷のう、冷えたペットボトルなどを当てます。
詳しい記事はこちら:自力で水を飲ませて!覚えておきたい「熱中症」の応急処置
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/サノマキコ