「夏場のマスク」でリスクは...? 医師に聞いた「熱中症」が起こる仕組み

この夏は、マスクを手放せないなかでの熱中症対策が欠かせません。「新しい生活様式」に合わせた正しい対策法で、元気に暑さを乗り越えましょう。帝京大学医学部教授の三宅康史(みやけ・やすふみ)先生に、マスク着用時の「熱中症」のリスクについて伺いました。

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感染予防にはマスクが効果的。
でも熱中症のリスクは高まる?

すでに30℃を超す真夏日も増え、マスクを着用することでの熱中症のリスクを心配する声もあがっています。

そこで、三宅康史先生に「新しい生活様式」での熱中症のリスクと予防策を伺いました。

「マスクの着用でこの夏、熱中症患者が増加するかというと、普通に生活している分には考えにくいでしょう。マスクをすると、呼気によって体から失われる水分が抑えられ、脱水になりにくくなります。また、湿った空気を吸うことでのどが湿気を帯び、感染症対策という意味では効用があります」

では、マスク着用時の注意は?

「たとえ涼しい場所であってもこまめに水分を摂る、人との距離を十分にとれる場合は適宜外すといった工夫を。冷房の効いていない場所では、冷たい水で水分補給をする、休憩時にはマスクを外して冷たい空気を吸い、体を冷やすことで、熱中症を防ぐことができます」。

熱中症はこうして起こります

暑いとき
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体温が上昇する
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血液の流れが滞る、体に熱がたまる「夏場のマスク」でリスクは...? 医師に聞いた「熱中症」が起こる仕組み 2008_P046_001.jpg ▼
さらに体温が上昇
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熱中症が起こる

こんな症状があったら熱中症です

●熱失神
皮膚の血管が拡張して血圧が低下。脳への血流が減少して発生。めまい、顔の異常なほてり、顔面蒼白など。

●熱疲労
大量に汗をかき、水分補給が追いつかなくなって起こります。全身の倦怠感、嘔吐、頭痛など。

●熱けいれん
発汗量が急激に増え、血中の塩分濃度が低下して発症。足がつる、筋肉のけいれん、手足のしびれなど。

●熱射病
高体温状態となり、中枢機能に異常をきたす。40℃前後の高熱、意識がはっきりしない、言葉が不明瞭など。

「なりやすい人」のタイプは?

・お酒の飲み過ぎ
過度な飲酒は、脱水を引き起こして熱中症を起こしやすくします。適度な飲酒を心がけて。

・暑さに慣れていない
体温の調節機能が低い傾向にあります。できるだけ汗をかいて、暑さに負けない体づくりを。

・太っている
皮下脂肪が多いと、体の中にたまった熱を逃がしにくくなり、熱中症になりやすい傾向が。

・体調がすぐれない
寝不足や疲労などで体調が悪いと、発汗機能や血液の巡りが悪くなり熱を逃がしにくくなります。

・運動する習慣がない
運動習慣のない人が急に体を動かすと、体内で急激に発生した熱を逃がすことができなくなります。

・持病がある
糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全などで治療を受けている人は、特に注意が必要です。

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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/サノマキコ

 

帝京大学医学部 教授
三宅康史(みやけ・やすふみ)先生
東京医科歯科大学医学部卒業。帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長、日本救急医学会評議員・専門医・指導医、熱中症に関する委員会元委員長。

この記事は『毎日が発見』2020年8月号に掲載の情報です。

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