風邪を引いた後に鼻水が出続けたり、鼻づまりが治らなかったり、緑色の鼻水が出る......。もしかして、その症状は風邪ではなくて「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」かもしれません。副鼻腔炎はその名前の通り、顔の内側にある「副鼻腔」という部位が細菌によって炎症を起こしてしまう疾患です。鼻づまりや鼻水がたれるなどをはじめとした症状が現れ、頭痛や鼻づまりによる息苦しさなどもあるため、日常生活にも支障をきたすことも多いです。
副鼻腔炎の症状や原因、治療方法、予防法などについて、副鼻腔炎の診断と治療を専門とする東京女子医科大学病院の野中学先生にお聞きしました。
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抗菌薬で副鼻腔内の炎症を抑える
副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の2つのタイプがあります。さらに慢性副鼻腔炎は、「蓄膿症」「好酸球性副鼻腔炎」「副鼻腔真菌症」の3つのタイプに分かれます。副鼻腔炎の治療方法は、薬物療法、局所療法、手術の3種類があり、これらの治療方法を組み合わせることもあります。
「治療の中心となるのは、薬物療法です。副鼻腔炎の炎症を抑えるために行います。副鼻腔炎のタイプによって使用する薬が異なります。それぞれの薬物治療を順番に見ていきましょう」(野中先生)
●急性副鼻腔炎
風邪やインフルエンザなどをきっかけに起こるタイプ。急性副鼻腔炎の治療では、薬物療法が中心です。おもに、細菌感染を抑えるための「抗菌薬」(抗生剤ともいう)を1週間~1カ月ほど服用します。炎症による痛みを緩和させる効果のある「消炎鎮痛剤」や、鼻水を緩和させる「去痰薬」を用いることもあります。
慢性副鼻腔炎に分類される蓄膿症、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症の薬物療法は、以下の通りです。
○蓄膿症
急性副鼻腔炎が慢性化することでなることが多いタイプ。細菌の増殖を抑える作用を持つ「マクロライド系抗菌薬」を、少量で長期的に服用します。マクロライド系抗菌薬は、気管支炎などの呼吸器の病気でも使用される薬です。鼻水を軽減させる効果があり、副作用も少なく、繰り返し使用することができます。そのほか、「ムコダイン」などの去痰薬を使用することもあります。
○好酸球性副鼻腔炎
アレルギーが原因で発症し、副鼻腔に「好酸球」が増えるタイプ。「ステロイド薬」や「ロイコトリエン受容体拮抗薬」などを使います。
ステロイド薬は、アレルギー炎症を抑えることができます。また、鼻茸(鼻の粘膜にできる良性のポリープのこと)を小さくする効果もあるため、鼻づまりの改善も期待できます。基本的に鼻噴霧薬(鼻腔内にスプレーする薬)として使用しますが、重度になると内服薬を用いるなどの「全身ステロイド療法」を行うことがあります。ステロイド薬は長期的に使用すると、さまざまな副作用のリスクがあるため、慎重に処方されます。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、「モンテルカスト」という薬を使用します。モンテルカストは、ステロイド薬とは異なる作用でアレルギー炎症を抑えることができます。ステロイド薬との併用が推奨されていて、基本的に内服薬として用います。
○副鼻腔真菌症
空気中に浮遊しているカビ菌(真菌)が、副鼻腔内で増殖することが原因となるタイプ。このタイプは手術治療が基本ですが、目の奥や脳にまでカビが広がる「浸潤型」だと「抗真菌薬」を内服や注射薬で用いることが多くあります。
副鼻腔炎の治療は、上記の薬物治療のほかに「局所療法」もあります。局所療法では、はじめに鼻腔や副鼻腔に溜まった膿を吸い出します。次に、薬を霧状にして噴射する「ネブライザー」を使って、抗菌薬やステロイド薬を吸入します。ネブライザーを使用することで、炎症を起こしている場所に直接薬を届けることができるため、内服薬と比べて薬の量を少なくすることができ、副作用を軽減することが期待できます。
副鼻腔炎の治療として手術が行われることもあります。鼻腔に鼻茸がある場合に検討されます。内視鏡手術が一般的で、全身麻酔で行います。手術時間は2~3時間程度で、1週間弱の入院を要します。内視鏡は鼻腔から挿入するため、痛みや出血が少なく、体への負担も比較的少ないです。内視鏡の先端にはレンズがついていて、モニターで副鼻腔内を観察しながら手術できます。内視鏡とともに「マイクロデブリッダー」という先端に刃がついている器具も使います。マイクロデブリッダーは、鼻茸や炎症を起こした粘膜を切除して吸引するものです。
「手術をしても副鼻腔炎は再発することがあります。再発を防ぐために、手術後にも薬物療法を行います。処方された薬を途中で自己判断でやめることは絶対にしてはいけません。主治医の指示にしたがって、しっかりと治しましょう」(野中先生)
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取材・文/東江夏海(デコ)