鼻づまりが治らない、黄色や緑色の鼻水が出る。それ、副鼻腔炎の症状かも/副鼻腔炎

風邪を引いた後に鼻水が出続けたり、鼻づまりが治らなかったり、緑色の鼻水が出る......。もしかして、その症状は風邪ではなくて「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」かもしれません。副鼻腔炎はその名前の通り、顔の内側にある「副鼻腔」という部位が細菌によって炎症を起こしてしまう疾患です。鼻づまりや鼻水がたれるなどをはじめとした症状が現れ、頭痛や鼻づまりによる息苦しさなどもあるため、日常生活にも支障をきたすことも多いです。

副鼻腔炎の症状や原因、治療方法、予防法などについて、副鼻腔炎の診断と治療を専門とする東京女子医科大学病院の野中学先生にお聞きしました。

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蓄膿症は副鼻腔炎のひとつのタイプ

副鼻腔炎は、「副鼻腔」という部位が炎症を起こす疾患です。「副鼻腔」は、顔の内側にあります。骨で囲まれており、内側は粘膜で覆われた空洞です。頬骨の中にある「上顎洞(じょうがくどう)」、おでこの周りにある「前頭洞(ぜんとうどう)」、目と目の間にある「篩骨洞(しこつどう)」、目と目の間の後ろにある「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」の4種類があり、左右で合計8つあります。

鼻の穴(鼻孔)から咽頭(鼻の奥から食道につながる通路)までの空気の通路を「鼻腔(びくう)」といいますが、すべての副鼻腔は鼻腔と小さな孔でつながっています。副鼻腔は、その孔を通して換気されています。

「副鼻腔炎では、副鼻腔のすべてが炎症を起こすわけではありません。上記4種類のうち1種類の左右両側だったり、片側だけだったりします」(野中先生)

副鼻腔炎は大きく分けると「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」の2つのタイプがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

●急性副鼻腔炎
おもな症状には、鼻水が出る「鼻漏(びろう)」や鼻づまり、鼻水がのどの奥にたれる「後鼻漏(こうびろう)」、においを感じにくくなる「嗅覚障害」などがあります。急性副鼻腔炎は、症状が現れてから1カ月以内に治るものを指し、副鼻腔炎の種類のなかでもっとも多くの人に該当します。風邪やインフルエンザなどのウイルス感染後におこる細菌への感染がおもな原因です。疲労や睡眠不足などによって免疫力が低下するとなりやすくなります。

●慢性副鼻腔炎
鼻水や鼻づまりが3カ月以上続いていると、慢性副鼻腔炎に移行していると考えられます。おもな症状には、鼻づまり、鼻漏、後鼻漏、嗅覚異常、頭痛、頭が重い感覚がする「頭重感(ずじゅうかん)」があります。また、慢性副鼻腔炎は原因によって3タイプに分類することができます。3タイプの特徴は以下の通りです。

○蓄膿症(ちくのうしょう)
ウイルス感染によって鼻腔の炎症が起こると、鼻腔の粘膜が腫れてしまって、鼻腔と副鼻腔の間にある孔がふさがります。すると、副鼻腔の中は密閉されて細菌感染が起こり、膿が溜まってしまいます。蓄膿症では、上顎洞に膿が溜まっていることが多くあります。黄色い鼻水や緑色の粘り気のある鼻水が現れて、症状が進行すると嗅覚障害が現れることもあります。

○好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)
詳細は不明ですが、アレルギーが原因で発症し、「好酸球」が副鼻腔に増加します。好酸球とは、白血球の一種で、免疫に関わる細胞です。アレルギーを起こしたときに体内で増えます。好酸球性副鼻腔炎では篩骨洞に炎症を起こしていることが多く、黄色く粘り気のある鼻水が現れます。早期から嗅覚障害が現れることが多く、ぜんそくを併発している患者が多いです。また、近年、患者数も増えており、2015年に「指定難病」*になりました。治療方法の研究が進められています。

*原因が明らかでなく、治療方法が確立していない疾病。長期の療養が必要で、患者数が少ない。国から医療費の助成金が受け取れる。

○副鼻腔真菌症(ふくびくうしんきんしょう)
空気中に浮遊しているカビ菌(真菌)が、副鼻腔内で増殖することが原因となって発症します。上顎洞が炎症を起こしていることが多いです。糖尿病やリウマチなどの疾患を持っていたり、抗がん剤治療を受けているなど、免疫力が低下した方がなりやすいです。菌が増殖した片側の鼻から、悪臭を伴う鼻水が出ることが特徴です。

「副鼻腔炎は自然治癒させようとせずに、初期のうちに治すことが大切です。下記の5つの症状に当てはまる症状があれば、すぐに病院へ行きましょう」(野中先生)

・ 風邪を引いた後、熱は下がったのに鼻水や鼻づまりが治らない
・ 膿のような緑色の鼻水が2~3日続く
・ 頭が重い感覚(頭重感)がある
・ のどの奥に鼻水がたれるような感覚がある
・ ぜんそくがあり、なおかつ鼻づまりや鼻水に悩んでいる

 

次の記事「急性副鼻腔炎になって目の痛みや顔面痛があるときは、重篤な症状のサインかも。すぐに病院へ/副鼻腔炎(2)」はこちら。

取材・文/東江夏海(デコ)

 

<教えてくれた人>

野中 学(のなか・まなぶ)先生

東京女子医科大学病院耳鼻咽喉科教授、講座主任。1985年日本医科大学卒業。副鼻腔炎や中耳炎などの疾患、内視鏡下副鼻腔手術、鼻中隔矯正術、下甲介手術、鼓室形成術、アブミ骨手術、顔面神経減荷術などの手術を専門とする。

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