副鼻腔炎の検査は症状に応じてさまざま。問診によって受けるべき検査が決まる/副鼻腔炎

風邪を引いた後に鼻水が出続けたり、鼻づまりが治らなかったり、緑色の鼻水が出る......。もしかして、その症状は風邪ではなくて「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」かもしれません。副鼻腔炎はその名前の通り、顔の内側にある「副鼻腔」という部位が細菌によって炎症を起こしてしまう疾患です。鼻づまりや鼻水がたれるなどをはじめとした症状が現れ、頭痛や鼻づまりによる息苦しさなどもあるため、日常生活にも支障をきたすことも多いです。

副鼻腔炎の症状や原因、治療方法、予防法などについて、副鼻腔炎の診断と治療を専門とする東京女子医科大学病院の野中学先生にお聞きしました。

副鼻腔炎の検査は症状に応じてさまざま。問診によって受けるべき検査が決まる/副鼻腔炎 pixta_45653448_S.jpg前の記事「急性副鼻腔炎になって目の痛みや顔面痛があるときは、重篤な症状のサインかも。すぐに病院へ/副鼻腔炎(2)」はこちら。

 

問診ではしっかり症状を伝えよう

「副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の2つのタイプがあります。さらに、慢性副鼻腔炎は、『蓄膿症』『好酸球性副鼻腔炎』『副鼻腔真菌症』の3つのタイプに分かれます。それぞれのタイプによって、治療方法が異なるため、しっかりと診断を受けることが大切です。副鼻腔炎の診断には、はじめに問診をします。症状が現れた時期やアレルギーの有無を問診で確認した後、症状に応じて以下の内容の検査を行います」(野中先生)

●細菌検査
鼻水を採取して細菌に感染しているか、また、どのような細菌が繁殖しているかを調べる検査です。急性副鼻腔炎が疑われる場合と、蓄膿症などの慢性副鼻腔炎が疑われる場合に行います。

●内視鏡検査
内視鏡を使って、鼻のなかの状態を確認します。副鼻腔炎になると、鼻腔の粘膜が炎症を起こして、鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープができることが多くあります。鼻茸があるとひどい鼻づまりを引き起こしやすいため、鼻茸の大きさや部位を確認します。

●血液検査
花粉やハウスダストなどへのアレルギーの有無と、好酸球(好酸球の一種)が過剰に増えていないかを調べる検査です。おもに、好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合に行います。

●嗅覚検査
副鼻腔炎になると、においを感じにくくなる「嗅覚障害」になることがあります。嗅覚に関する自覚症状がある場合に、「静脈性嗅覚検査」か「基準嗅力検査」を行います。

静脈性嗅覚検査は、にんにく臭のするビタミン剤を腕の静脈に注射して、にんにくのにおいを感じるかどうかを確認するテストです。にんにく臭のするビタミン剤が血管を通って肺まで届くと、その人の吐く息ににんにく臭が含まれます。嗅覚障害があると、にんにく臭が感じられなかったり、気づくまでに時間がかかったり、感じる持続時間が嗅覚が正常な人よりも短くなります。

基準嗅力検査は、花や食べ物などの5種類のにおいを嗅ぎ分けるテストです。弱いにおいから強いにおいまでを使って、嗅覚障害の有無や程度を確認します。

●画像検査
内視鏡検査だけでは、副鼻腔の中まで観察することは困難です。そのため、レントゲン撮影やCT検査(コンピュータ断層撮影)、MRI検査(磁気共鳴画像)などを用いて炎症の程度や広がりを確認します。小さなクリニックでは、CTやMRIなどの設備がないことがほとんどのため、レントゲン撮影を行うことが一般的です。

レントゲン撮影では、副鼻腔炎の状況がわかります。健康な場合、鼻の周囲はレントゲンをとると黒く写りますが、副鼻腔炎になると白く写ります。

CT検査では、どこに炎症を起こしているのかがはっきりとわかります。副鼻腔の炎症が長引く時や、目の痛みやかすみがあるなど、隣接する臓器にまで広がっている恐れがある場合に行います。

MRI検査では、炎症を起こしている原因を調べることができます。カビと細菌の違いもわかるため、副鼻腔真菌症が疑われる場合に行うことが多いです。

 

「副鼻腔炎のタイプによって、治療方法は異なります。そのため、副鼻腔炎の検査で、どのタイプなのかを判明させることはとても大切です。問診時にしっかりと症状を伝え、しっかりと診断を受けましょう」(野中先生)

 

次の記事「副鼻腔炎の治療方法は薬物治療が中心。そのほか、ネブライザーを使った局所療法や手術なども/副鼻腔炎(4)」はこちら。

取材・文/東江夏海(デコ)

 

 

<教えてくれた人>

野中 学(のなか・まなぶ)先生

東京女子医科大学病院耳鼻咽喉科教授、講座主任。1985年日本医科大学卒業。副鼻腔炎や中耳炎などの疾患、内視鏡下副鼻腔手術、鼻中隔矯正術、下甲介手術、鼓室形成術、アブミ骨手術、顔面神経減荷術などの手術を専門とする。

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