人生の幸せは自分で好きなように決める
衣食住に困らず、自分の身の回りのことを自分でして、周囲の人とコミュニケーションをとりながら、少しは自分の好きなことを毎日できる。これが満足のいく人生だと私は考えます。お金ではなく、自分の希望する暮らし。毎日、上機嫌でいられるのが理想です。そのためには、健康でなければいけません。
人間におけるテストステロン補充は、植物が元気でいるよう植木鉢にハイドロ活力剤を定期的に差し込むようなもの! 足りないものは適時チャージするというスタイルが、長寿時代の日本の常識になっていくでしょう。チャージの方法は年齢や症状に合わせて、専門家のサポートで安全に行えば、問題はありません。
「日本性科学会セクシュアリティ研究会」の調査によると、日本では、中高年のセックスレスが進んでいます。40代、50代の夫婦間のセックスレスは、10年間で約2倍に増えているのです。理由は、妻が夫の要求を拒否できるようになったからと分析されています。つまり日本はようやく、女性がセックスを拒否できる時代になったということです。
一方で同じ調査で、対象者を交際相手のいる独身者に限ると、月1回以上セックスをしているカップルが6割以上となりました。また、夫婦間セックスレスと半比例して、パートナー以外とのセックスも増えています。性欲がないわけではない人も少なからずいることが伺えます。
自分勝手で楽しくないセックスをする夫の要求を拒否できなかった女性が、自分の気持ちに従って拒否できるようになったのは、喜ぶべき大きな変化。日本女性も少しずつ受け身のセックスではなく、自分から求めたり、拒んだり、意思表示ができるようになってきたというひとつの表れかもしれません。
しかし医学的なエビデンスはまだないものの、前述のように長年、中高年女性を診てきた泌尿器科医の私の印象では、セックスを継続的に行っている人は、行っていない人に比べて、溌溂としていて若々しい印象があるのも事実です。
セックスレスの要因はいろいろありますが、ひとつは50代前後で閉経を迎えた女性の多くに前述のように女性ホルモン低下による性交痛や性交後出血、セックス後の再発性膀胱炎等のGSMの病状が発生するという身体的な問題があります。さらに加えて、嫌々セックスしていると、当たり前ですが、性的意欲はどんどん落ちていくという精神的問題があります。加えて以前からセックスが楽しいと思えなかったが、夫の欲望に答えるために"お勤め"をしていた。閉経したら"お勤め"は、卒業させてほしいという女性もまだ日本では多いのです。一方、閉経前からセックスを楽しみにしており、閉経してからは、ますます性欲がアップしているという女性も確かに存在します。この違いは、血中のテストステロン値の違いも大きいですが、自分のセクシュアリティに真剣に向き合い、どのような人とどのようなセックスをすると自分が楽しいかを模索し、その楽しいセックスをセックスパートナーに、真摯に伝えてきたのか?というコミュニケーションの問題も横たわっています。
いくつになっても、したいと思えばセックスができるフェムゾーンを維持し、テストステロン補充を行って、パートナーとの正直なコミュニケーションによって生きるよろこびの源泉でもある性欲を維持することは、女性が健康と若さを保つうえで、とても大切です。男性もテストステロン補充と、パートナーとの正直なコミュニケーションによって、生きるよろこびの源泉でもある性欲を維持することは同じですが、局所のケア、つまりEDにならないためには、日々の努力が女性より大切です。
具体的には、パートナーがいてもいなくても定期的なマスターベーションをおすすめします。加齢とともに腟内での射精がしにくくなってくる男性が多くなってきますが、それはあまり気にしなくても大丈夫です! 妊娠を希望しない女性達にとっては、男性の射精はそれほど重要なことではありません。射精しにくくなったのを理由に、セックスを卒業するのではなく、女性の反応をみて視覚的に興奮したり、ペニス以外の皮膚刺激による快感を追求したり、セックスパートナーといっしょにトランス状態(変性意識状態ともいう)に入る練習をしたりと、できることはたくさんあります。あきらめずにがんばりましょう。
そして性欲がわがない、やる気が出ない。生きる意欲がわかない。イライラする。眠れない等の自覚症状がでたら、一歩踏み出して、まずテストステロンを測定し、低下していればテストステロン補充を試してみましょう。テストステロンで背中をポンと押され、生きる意欲を取り戻す道を踏み出せば、人生後半のプラスサイクルが動き出します。