閉経後の性交痛・性欲減退で、セックスから遠ざかるのはもったいない! 性的意欲と生きる意欲の関係性

使わない機能は衰えていく

廃用性症候群は、脳、筋肉、そして男性器、女性器を含めた全身の問題なのです。軽く考えていると、後悔することになりかねません。

セックスにより快楽ホルモンであるドーパミンがでるだけではなく、セクシャルなスキンシップ、親しい人とのハグやマッサージなどのボディタッチにより、幸せホルモンであるセロトニンやオキシトシンの分泌が活性化し、そこから得られるハッピー気分は免疫力をアップさせてくれます。

コロナに限らず、パンデミックが起きると、テストステロンの少ない女性に関しては、性的意欲興奮障害が起きることが知られています。性的意欲興奮障害とは、「イベントに関係なく自発的な性的意欲の常体的な消失。または減少。性的意欲がわかないと、意識的に性行為を避けるようになる。さらに性行為の際に、性的興奮意欲を維持することができず、日常生活の中に性的な考えや妄想が起こることがない」といった状態のこと。

ただし、これはアメリカの定義。先程も言いましたが、日本では問題視されていません。「日本人夫婦はほとんどセックスレスなのに、欧米はお盛ん」という話はいつも耳にしている定説かと思います。実際データでもその通りです。

90歳まで生きるのが普通になった日本女性の生活の質は、70歳後半から急速に低下してしまいます。世界一長寿なのに、多くの女性が足腰やひざの痛みのために動けなくなり、人生を楽しむことができなくなってしまうのです。セックスをしている人は、QOLが高いというデータもあり、セックスを軽視することはできません。

ちなみに男性は、生物学的にも経済的にも、自立した生活が送れない状態になると死んでしまうことが多いので、女性ほど健康寿命と実際の寿命の乖離は大きくありません。

この、日本女性の「健康寿命」と「実寿命」の大きな開きをなくすための要素が、セクシュアリティだ、と私は思っています。そこでもテストステロンが重要な鍵を握っているのです。

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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