男女とも健康長寿には「男性ホルモン」が重要!? 生きる気力につながる「テストステロン補充」の選択肢

『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』 (関口由紀/産業編集センター)第5回【全5回】

年齢とともにコントロールできない不調に陥りはじめたら更年期かも? 「女性医療クリニックLUNAグループ」理事長の関口由紀さんは、減少すると更年期症状を引き起こすと言われる男性ホルモン「テストステロン」に注目。『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』は、生きる活力ともなる「テストステロン」の知られざる可能性を詳しく解説した1冊。女性も男性も、更年期を乗り越えて、元気に生きるヒントが満載です!

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。


女性のテストステロン値の最新調査研究

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テストステロンは、体内にある強力な男性ホルモンです。男性は精巣から分泌され、男性器や男性らしい脳の形成に寄与し、思春期には精通や声変わりを後押し、筋肉や骨の発達を促進させます。女性は、女性ホルモンが、テストステロンを原料につくり変えられていて、卵巣から分泌されます。これは女性らしい体形、皮膚や髪の美しさに作用します。しかし男性より少量ですが、女性の卵巣からもテストステロンは分泌されています。また腎臓の上にある副腎からも男女ともテストステロンは分泌されています。

年をとると男性はテストステロンが低下し女性的になります。女性は女性ホルモンが減って体内での男性ホルモンの比率が高くなり、決断力がついたり、不条理なことに対する反抗心が芽生えたり、性欲がアップする人もいます。たとえ女性ホルモンが極端に少なくなっていても、テストステロンやその前駆物質DHEAがある程度あれば、女性の元気はそこそこ保たれますが、それらまでもが欠乏することでフレイルに関わってきます。「男性医学の父」熊本悦明先生(以下、熊ちゃん先生)と私は、健康女性のテストステロン値の調査もしました。残念ながら熊ちゃん先生の最後の研究になってしまいました。

赤枝医学研究財団の研究で、2020年10月~21年2月の5カ月の間に女性医療クリニック・LUNAネクストステージ、札幌東豊病院、カレスサッポロ時計台記念病院を受診した健康な160例のボランティア女性の血液を採取し、テストステロン、遊離テストステロン、DHEA-S、エストラジオール、IGF-1、などの測定を実施しました。

同時に一部ボランティアに関しては健康関連OOL指数 SF-36(R)(日本語版)にも回答してもらいました。

ボランティア女性の年齢は、平均値45歳、中央値41歳、最大値87歳、最小値20歳でした。人数分布は、20歳代16例、30歳代52例、40歳代43例、50歳代17例、60歳代15例、70歳代10例、80歳代7例でした。

今回のボランティアは、自分の健康感に関して70代まではある程度女性ホルモンが維持されて、80歳代でやや低下していたので、閉経後の各年齢において健康感が標準的な女性の集団であることがわかります。この集団でも、閉経後の女性のE2(エストラジオール)/FT(フリーステロン)の比率が、男性に近づいていることも明らかになっています。

そしてエストラジオールは、閉経後に急速に低下していますが、閉経後も10~20pg/mlで維持されています。この事実は、陰部不快感・頻尿・性交痛を訴えて女性外来を訪れるGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)の多くの患者のエストラジオール値が5pg/ml未満であることに比べると明らかに高い値です。

一方成長ホルモンの血中濃度と相関すると考えられるIGF-1に関しては、加齢とともに低下していました。

注目の男性ホルモンに関しては、健康な女性の血中の男性ホルモンは、男性の10分の1レベルでしたが、女性においてもDHEAとフリーテストステロンは、加齢とともに低下しています。一方トータルテストステロンに関しては、他の2つの男性ホルモンに比べて低下のレベルが小さく、これは日本男性においても報告されている、欧米人とはちがう事実です

日本人は、性機能に関しては、欧米人に比べとても低い状況なのですが、これは文化・社会的問題のようです。健康な日本人は、男女とも、大豆イソフラボン等の性ホルモン様フラボノイドが豊富な食事を摂ることにより、最低レベルのテストステロンとエスラジオールを維持している可能性があります。

つまり自分は健康と感じている女性も、加齢によってDHEAとフリーテストステロンは低下傾向にあり、生きる意欲の低下等の不健康な自覚症状が出現した場合は、テストステロン補充がひとつの選択肢なのです。

熊ちゃん先生は65年にわたって患者さんを診てきた経験から、日本人の患者さんにはフリーテストステロン値を基準に、男性更年期治療を行ってきました。それは女性も同様であることがこの研究で明らかになりました。

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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