閉経後の性交痛・性欲減退で、セックスから遠ざかるのはもったいない! 性的意欲と生きる意欲の関係性

性的意欲と生きる意欲は相関する

性的意欲は、なにもセックスだけを指すわけではありません。性的意欲とは、自分が親密になりたいと感じる相手に、自分を求めてもらいたいと思う気持ちのこと。相手が異性だろうが同性だろうが関係ありません。好意を抱いた相手にどう見られるかを気にして身ぎれいにしようとする行為は、多少なりとも努力が必要で、それが自分のセクシャリティを磨くスイッチになると思います。この自分のセクシャリティを磨くための努力こそ、日本人が人生の最後まで、自立した生活を楽しむために必要なことだと思うのです。

現在の50歳~70歳の日本人は、自分の幸福度に関して敏感です。自分一人の時間も、同性同士でも、異性の友達とも、性的パートナーとも大いに楽しみたいと考えているはずです。昔ならば「欲張り」と呼ばれたような日本人が、今後はもっと増加してくると私は予想しています。欲張り上等! これからの日本人は自ら、幸せな人生を手に入れるためのアクションを、もっと積極的に起こすべきです。

女性の場合、セックスパートナーから性的刺激を受けたにもかかわらず、性的妄想や興奮が起こらない人がいます。これは性的意欲興奮障害です。欧米では、この性的意欲興奮障害の治療が、女性性機能障害のメインの治療対象になっています。しかし日本での女性性機能障害の治療はまだ性交疼痛症の治療が主になっています。さらに日本では女性性機能障害を積極的に治療する施設は少ないのが現状です。

50代になって女性ホルモンが減少しGSMによる性交痛があるのに、無理にセックスして性的意欲が低下し、セックスを避けるようになり、その結果がテストステロンまでもが減少し、性欲だけでなく生きる気力さえ失われる。いわゆるフレイルに陥ってしまう女性もいます。

一方で、体内のテストステロン比率が高まることで、性欲が強くなり、50歳以降に性体験を重ねる人もいます。閉経後、自分の意見をしっかり持つようになり、さらにその意見をはっきり言うようになる人が増えてくるのも、体内で女性ホルモンより男性ホルモンの比率が高くなったからにほかなりません。このように、体の中の性ホルモンの働きでもたらされる影響はさまざま。つまりGSMの改善にも、高齢者の生活の質の向上にも、性ホルモンの働きは重要なのです。男性ホルモン&女性ホルモンを医学的治療でコントロールすることで、様々な悩みが解決できることは、最近になってエビデンスが多数集まってきています

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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