「相手の気持ちが分からない」「その場の雰囲気を察することができない」「整理整頓ができず部屋中に物が散乱している」...。仕事や家庭生活でこんな悩みを持ち、「もしかしたら自分は『大人の発達障害』かもしれない」と考える人が増えているようです。以前は「発達障害」といえば子どもの疾患だと考えられていましたが、近年、大人になってからも症状が続くことが認識されるようになりました。テレビや雑誌などでも「大人の発達障害」として、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一種である「アスペルガー症候群」などが頻繁に取り上げられるようになっています。
発達障害とはどんな疾患で、どんな特性があるのかなどについて、発達障害の診断・治療の第一人者である昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明先生に聞きました。
前の記事「発達障害の人に見られる職場での特異な行動。その裏にある理由とは?/大人の発達障害(10)」はこちら。
●発達障害はどの診療科を受診すればいいのでしょうか?
以前は、発達障害は児童や思春期の疾患と考えられていて、小児科の一部や児童精神科の医師が診察していました。児童精神科は児童期の子どもを中心に診察するところですが、最近は一部で、成人の発達障害を受け入れているところもあります。ただし、子どもと大人の両方の発達障害を診療できる医師の数は限られています。
「大人の発達障害がクローズアップされるようになり、会社の上司や産業医に受診を勧められるケース、自分でいろいろ調べて発達障害かもしれないと思い受診するケースなどが増えています。最近は大学病院の精神科や町の精神科クリニックでも発達障害の診療が行われるようになってきましたが、専門知識を持ち診療できる医師やクリニックの数が十分ではないのが現状です」と岩波先生。
●発達障害の診察を受けたいときの病院の探し方は?
最近は、インターネットや書籍などでも発達障害の情報が発信されていて、自分が発達障害ではないかと考えて受診を希望する人が多いです。まずは病院の情報を収集することが必要だといえます。インターネットなどで、どういう病院に行けばいいのか、どんな診療科で発達障害の治療をしているのかなどが調べられます。
いまはほとんどの病院でホームページを開設しているので、その病院が発達障害の診療を行っているかどうかが分かります。また、発達障害専門のホームページや製薬会社のホームページでは、発達障害についての情報が提供されているため、参考にするのもいいかもしれません。なお、子どもの発達障害の場合は、住んでいる地域の保健センターや児童相談所などに相談し、病院を紹介してもらう方法もあります。
・都市部でのクリニックの探し方
都市部では病院の数は多いのですが、発達障害の診察となると数は限られてきます。大学病院でも専門に診療していないことがあります。町のクリニックで発達障害を専門に診ているところは、さらに少ないといえます。近年、受診を希望する人が多いので、病院が見つかったとしても受診予約をなかなか入れられないことも珍しくないようです。
・地方でのクリニックの探し方
地方においては、残念ながら発達障害を専門に診る診療科がほとんど見あたらないといえます。頼りになるのは地域の大学病院か、国公立の病院。まずそれらの病院の精神科などを受診をして相談するとよいでしょう。発達障害を診ていなくても地域の情報を持っているので、「この病院で診てもらえばいいですよ」と教えてもらえる場合があります。
次の記事「発達障害の診察では、小中学校時代の通知表も大事な情報源/大人の発達障害(12)」はこちら。
取材・文/松澤ゆかり