発達障害の診察では、小中学校時代の通知表も大事な情報源/大人の発達障害

「相手の気持ちが分からない」「その場の雰囲気を察することができない」「整理整頓ができず部屋中に物が散乱している」...。仕事や家庭生活でこんな悩みを持ち、「もしかしたら自分は『大人の発達障害』かもしれない」と考える人が増えているようです。以前は「発達障害」といえば子どもの疾患だと考えられていましたが、近年、大人になってからも症状が続くことが認識されるようになりました。テレビや雑誌などでも「大人の発達障害」として、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一種である「アスペルガー症候群」などが頻繁に取り上げられるようになっています。

発達障害とはどんな疾患で、どんな特性があるのかなどについて、発達障害の診断・治療の第一人者である昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明先生に聞きました。

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●「問診」が重視される発達障害の診断

発達障害かどうかを調べるために、精神科でどのような診断が行われるのかを見ていきます。初診の場合、症状にもよりますが30分から1時間ほどの問診を行います。「いまどんなことで困っていて診察を受けに来たのか」ということを具体的に聞いていくのです。例えば、会社の仕事上のミスが多いとか、対人関係が悪化しているとか、問診から情報を得て診断の参考にします。「診断ではいまの症状だけで判断せずに、本人や家族から子ども時代の様子を聞き、ADHDやASDなどに当てはまるかどうかを検討します」と岩波先生。

診断では具体的に次のようなことを中心に聞きます。
・その症状はいつごろから起きているのか。
・いままでの症状や経過は?
・子どものころに多動の症状があったか、不注意で忘れ物が多かったか。
・子どものころ友達との関係はどうだったか。
・電車にすごくこだわるなど、こだわりの症状があったか。

問診に加えていくつかの検査を行うことがあります。ただし検査はあくまでも問診の補助的に行うもので、それのみで発達障害の診断がつくことはありません。

関連記事「ADHD、ASDの診断では、問診に加えて成人向けの知能検査を行う場合も/大人の発達障害(13)」

  

●子どものころの行動や成績が記載されている通知表は大事な情報源

発達障害の診断のときには、小中学校時代の通知表があれば持ってきてもらいます。担任の先生の記載を確認することで、学校でどのように行動していたか、授業中はどうだったのかなどを詳しく知ることができるからです。その人の子どものころからの長期経過を見ていくことが大切なのです。

「通知表に書かれた『忘れ物が多い』『授業中に落ち着きがない』などの教師の記載から、子どものころの様子の一端がうかがえます。『このごろだいぶ話を聞けるようになりましたね』と書かれていれば、以前はもっと話を聞けなかったことが分かります。学校での態度のほかに、成績を見て知能的なことも参考にします。典型的なADHD、ASDの人を診断するのはそれほど難しくはありません」と岩波先生。

 

●診断が難しいのはうつ病などを合併しているケース

診断が難しいのは、発達障害にほかの精神疾患を合併している人の場合です。ASDやADHDは特に、うつ病や不安障害(注1)などを合併しているケースが多くみられます。合併していると症状が分かりにくいのです。発達障害の知識だけでなく、うつ病や不安障害などの知識がある医師でないと、成人の診断は難しい場合が多いといえます。

(注1)不安障害:生活に支障を来たすほど強い不安が頻繁に起こる疾患。めまい、呼吸困難、動悸、不眠、などの症状を伴うことがある。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

岩波明(いわなみ・あきら)先生

昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学附属烏山病院病院長。医学博士。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院、東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学精神医学教室准教授などを経て現職。著書に『発達障害』(文春新書)、『大人のADHD』(ちくま新書)などがある。

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