最近耳にする機会が多い「発達障害」はさまざまな疾患の総称/大人の発達障害

「相手の気持ちが分からない」「その場の雰囲気を察することができない」「整理整頓ができず部屋中に物が散乱している」...。仕事や家庭生活でこんな悩みを持ち、「もしかしたら自分は『大人の発達障害』かもしれない」と考える人が増えているようです。以前は「発達障害」といえば子どもの疾患だと考えられていましたが、近年、大人になってからも症状が続くことが認識されるようになりました。テレビや雑誌などでも「大人の発達障害」として、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一種である「アスペルガー症候群」などが頻繁に取り上げられるようになっています。

発達障害とはどんな疾患で、どんな特性があるのかなどについて、発達障害の診断・治療の第一人者である昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明先生に聞きました。

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●発達障害にはさまざまな疾患がある

少し前までは社会人に多い精神疾患といえば「うつ病」だといわれてきました。ここ十数年で「うつ病」に加えて、新たに「発達障害」という精神疾患が頻繁に取り上げられるようになっています。

「誤解している人も多いのですが、『発達障害』というのは一つの疾患を表す言葉ではありません。さまざまな疾患をまとめた呼び方が『発達障害』なのです。例えば最近よく耳にするADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)なども『発達障害』に含まれます」と岩波先生は話します。

精神科の医師やカウンセラーなどの専門職でも、発達障害についてよく理解していない人が少なくないのが現状です。なぜかというと、これまで医療や福祉の対象とされてきた発達障害は、重度の自閉症や知的障害などの患者がほとんどだったからです。学校に通っていたり会社で仕事をしている軽度の発達障害の人たちがいるということや、その人たちに治療や支援が必要だということは、あまり知られていませんでした。

また、以前は発達障害というのは児童や思春期の疾患だと捉えられてきたため、小児科や児童精神科で扱われてきました。子ども時代に軽度の発達障害があったとしても、成長するにしたがって改善すると考えられていたのです。そのため、大人をおもな対象とした精神科の医師やカウンセラーの人たちには、発達障害に対する知識が蓄積されていなかったという側面もあります。

 

●「大人の発達障害」としてよく取り上げられるもの

近年、「大人の発達障害」という言葉をよく耳にするようになってきています。どんな種類の疾患があるのか簡単にまとめてみましょう。

<おもな大人の発達障害>
○ADHD(エイ・ディー・エイチ・ディー:注意欠如多動性障害)
○ASD(エイ・エス・ディー:自閉症スペクトラム障害)
  ・アスペルガー症候群
  ・自閉症
○LD(エル・ディー:学習障害)

これまで、時代によって発達障害の分類の方法や疾患名は変化してきました。また、人によっては複数の疾患が重なっている場合もあります。

 

次の記事「よく取り上げられる大人の発達障害はADHDとASD。どんな特性がある?/大人の発達障害(2)」はこちら。

取材・文/松澤ゆかり

 

岩波明(いわなみ・あきら)先生

昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学附属烏山病院病院長。医学博士。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院、東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学精神医学教室准教授などを経て現職。著書に『発達障害』(文春新書)、『大人のADHD』(ちくま新書)などがある。

昭和大学附属烏山病院ホームページ

 

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