ダイエット効果や健康効果が多くのメディアで注目されている食材、「もち麦」。なぜもち麦が身体にいいのか? ダイエットしたい人にオススメなのかを、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生がわかりやすく解説します。
もち麦によって2週間で変わる体を、あなたも感じてみませんか?
※この記事は『2週間で体が変わる「もち麦」ダイエット』(小林 弘幸/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「とりあえず2週間続けてみて。 もち麦ダイエットの簡単ルール/もち麦ダイエット(2)」はこちら。
注目の成分「βグルカン」とは?
もち麦の粘り気に秘密があります
「β ― グルカン」とは聞きなれないかもしれませんが、これこそが美容と健康に役立つもち麦パワーの素(もと)。水溶性食物繊維の一種で、水に溶けると粘り気がでます。
この粘り気で腸内の不要なものを包みこんで排出するほか、下のイラストのように体内のさまざまな器官で糖質や脂質の消化・吸収を遅らせる働きがあります。
世界各国でβ ― グルカンの健康効果が注目されていますが、各国の研究機関が認めたとり方は、「1日にβ ― グルカンを約3g以上」というもの。
ただし、現状ではβ ― グルカン約3gをとるために必要な食物繊維量を厳密に割り出すことができません。
そこで、β ― グルカンが含まれる水溶性食物繊維を十分にとることを考え、まずは1日に必要な食物繊維の摂取量をクリアすることを考えます。
現在の日本人の食物繊維摂取量は、女性(18~69歳)の場合で1日平均14.3g といわれています。これは、厚生労働省が目標とする量18g以上に3.7g も不足している状態です。
5割炊きのもち麦ごはん(お茶碗1杯分)に含まれる食物繊維は約3g 、1日2杯食べると6g になるので、不足分を補うことができます。
ふだんより食物繊維、なかでも水溶性食物繊維の摂取量が増えれば、それだけβ ―グルカンの摂取量も増えることが予想されます。
β―グルカンの体内での働き
βグルカンは体内のさまざまな器官で威力を発揮。小腸で分泌される「消化管ホルモン」には血糖値をコントロールする働きがあり、これがセカンドミール効果に関係しているといわれています。
【胃】
●水分を吸収してふくらみ、満足感を与える。
●粘り気をおびて、腸までゆっくり進む。
【小腸】
●糖質や脂質を包み込み、吸収を遅らせる(血糖値急上昇を抑制)。
●消化管ホルモンが分泌される (血糖値の急上昇を抑制、脳へ満腹信号を送る)。
●コレステロールの吸収を抑える。
【大腸】
●善玉菌のエサになって、善玉菌を増やす。
【β ―グルカンのパワー1】...血糖値の上昇を抑える
血糖値を制するものがダイエットを制す!
そもそも血糖値の急上昇でなぜ太るかというと、糖が「体脂肪の素」だからです。
そのしくみは、
1. 血中の糖をインスリンが処理できなくなると、血中に糖が余る
2. 血中の余った糖は肝臓で中性脂肪に合成され、再び血中へ
3. 中性脂肪は血管で運ばれて脂肪細胞に貯蔵される、
というもの。
この流れを断ち切るのがβ ―グルカンです。
β ― グルカンは水に溶けるとネバネバになり、腸内で糖質を包み込んで吸収を遅らせる働きがあり、もち麦は「血糖値の上昇をゆるやかにする」という目的にはピッタリの食品なのです。
いままでのダイエットといえば、摂取カロリーを重要視してきました。もちろん間違いではないのですが、摂取カロリーを減らすだけだと、筋肉まで減ってしまいます。筋肉量が減ると、基礎代謝が落ち、リバウンドする可能性が高まります。もちろん食べすぎはよくありませんが、とくに基礎代謝の落ちる40代からは、摂取カロリーより血糖値に着目したほうが効率的です。
【β ―グルカンのパワー2】...セカンドミール効果が期待できる
血糖値コントロールで太りにくい食習慣が身につく
β ―グルカンの血糖値への働きかけはまだまだあります。
β ― グルカンに包まれた糖は、いわゆるシールドで覆われた状態。そのため、小腸上部で腸壁から吸収されることなく、下部まで運ばれてきます。小腸の下部で吸収される利点は、その刺激によって「消化管ホルモン」が分泌されることです。これは、食事によって血糖値が上がるのを抑えるホルモンの一種。そのため、朝食でもち麦を食べておけば、昼食、さらにその次の夕食でも血糖値の上昇をゆるやかにしてくれるというわけです。これを「セカンドミール効果」といいます。
このセカンドミール効果を活かすためにも、もち麦を食べるなら朝がおすすめです。
また、セカンドミール効果を血糖値コントロールに活用することもできます。たとえば、飲み会の予定があり食べ過ぎてしまいそうな日は、朝食もしくは昼食でもち麦を食べておく。そんなふうに、食生活を無理なくフォローすることができます。
1日をとおして血糖値は上下動しており、食事が上昇タイミングになっている
朝食べたもち麦が昼にも働き、全体的にも血糖値が上がりにくくなっている。これがいわゆる「セカンドミール効果」。
【β ―グルカンのパワー3】...血中コレステロールを低下させる
好きなものを食べながらコレステロールも抑える
食事から脂質をとると、胆汁酸が合成されます。胆汁酸が分泌されると、脂質の消化・吸収が促され太ってしまいそうですが、β ―グルカンはその働きをブロックしてくれます。
胆汁酸は小腸で脂質を消化した後、体内に再び吸収され再利用されます。ですが、再利用されると胆汁酸の原料になるはずの悪玉コレステロール(LDL)が使われずに増量してしまうので、なるべく使われる状況にしておく必要があるのです。β ― グルカンには胆汁酸を取り込み、体外に排出。その結果、新たに胆汁酸がつくられコレステロール値が低下します。しかも、悪玉コレステロールだけを減らし、善玉(HDL)コレステロールを減らすことはありません。
◆悪玉と善玉、コレステロールの違いは?
善玉(HDL)コレステロール
あまったコレステロールを回収する。動脈硬化を予防する働きがあるので、少ないと健康上の問題に。
悪玉(LDL)コレステロール
末梢組織に細胞膜の原料となるコレステロールを届ける。増えすぎると動脈硬化の原因になる。
【β ―グルカンのパワー4】...脂質の吸収を抑える
もち麦を食べ続ければ自然とお腹がへこむ!?
これまで解説してきた内容からもお気づきのとおり、β ― グルカンの最大の働きは、糖や脂質など、体内に蓄積したくないものを吸収しにくくしてくれることにあります。
内臓脂肪もその一つ。内臓脂肪は40代以上に多い、ぽっこりお腹の原因。また、体内で糖から合成された脂肪は、内臓脂肪として貯蔵されやすいので注意が必要です。
脂質の吸収が抑えられることで、結果的にお腹周りがサイズダウンすることがあります。
これはβ ― グルカンが、余分な糖と脂質が体脂肪に変わるのをブロックしてくれるため。すぐに効果が出なくても、継続的に食べ続けることが大切です。
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