四十肩・五十肩と似た症状の「腱板断裂」。放っておくと最悪の場合人工関節になることも/四十肩・五十肩

40代を過ぎて、肩が痛い、腕が上がらないという時にまず思い浮かべるのが、四十肩・五十肩ではないでしょうか。「そのうち治るだろう」「年をとったから痛くなっただけ」と自分で判断し、放っておく人も多いですが、実は、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱えているのと同じ。気づかないうちに重症化していて、手術が必要となる場合もあるので、軽く考えるのは禁物です。

肩の仕組みをはじめ、四十肩・五十肩の原因や症状、予防法などを、麻生総合病院 スポーツ整形外科部長で、肩関節の治療を専門とする鈴木一秀先生にお聞きしました。

pixta_31530057_S.jpg前の記事「四十肩・五十肩のリハビリは1年が目安。最終段階「慢性期」に注意したいこと/四十肩・五十肩(9)」はこちら。

 

些細な衝撃でも断裂し、手術が必要な場合も

四十肩・五十肩だと思い、医療機関でも「一時的な痛み」と診断された場合でも、一向に改善せず、自然には治らないタイプの肩の痛みもあります。「むしろ重症化したり、別の重篤な症状が潜んでいたりする場合もあるので、軽く見てはいけません」と、鈴木先生。まず気をつけたい症状に、腱板断裂(けんばんだんれつ)があります。

これは、専門医によっては、四十肩・五十肩と診断された50歳以上の患者の4割に認められたというデータがあるほど、発症の多い肩の疾患。肩甲骨と上腕骨をつなぐ4本のインナーマッスルの腱板が切れる症状で、1本が切れても残りの3本が正常なら、腕は上がるので気づかないことも。しかし、そのまま肩を使っていると症状が悪化し、結果的に手術が必要となり、最悪の場合は人工関節になることもあります。

 

【症状】
四十肩・五十肩と症状が似ており、見過ごされる場合も多くありますが、見分け方があります。痛いほうの腕を痛くないほうの手で取って持ち上げることはできるのに、自力で持ち上げようとすると痛くてできないのが、大きな特徴。このような症状を感じたら、医療機関を受診しましょう。腱はレントゲンには写らないので、MRI検査が必要となります。

腱板が完全に切れている「完全断裂」と、部分的に切れている「不完全断裂」があり、完全断裂は断裂の大きさによって「小断裂」「中断裂」「大断裂」の3つに分けられます。それぞれの症状で治療法も異なり、断裂が大きいほど重症となります。

 

【原因】
原因もさまざまです。重労働をしている人やスポーツ選手に多い疾患と思われがちですが、
洗濯物を干したり、布団の上げ下ろしなど日常生活の中で反復運動を続けることでも、組織が損傷して断裂することも。特に、40代、50代は肩の筋肉や骨の組織が低下してくる年齢ですから、手を突いたり、肩をぶつけたりといった些細なことで断裂することもあるのです。突然断裂すると尋常ではない痛みが走ります。

 

【治療法】
重症の場合には手術をする場合もありますが、必ずしも必要ではありません。治療には大きく分けて保存療法と手術療法があり、患者の年齢、職業、生活習慣、断裂の大きさなどを考慮して選択されます。

不完全断裂の場合は、薬物療法やリハビリのほか、痛みに対しては関節のすべりをよくするヒアルロン酸や炎症を抑えるステロイド剤を注射するなどして、保存療法を行います。

手術に踏み切る一つの目安としては、完全断裂の場合と、不完全断裂で保存療法を3カ月続けても症状が改善しない場合です。肩関節の専門医は、主に内視鏡で修復する「関節鏡視下肩腱板修復手術」を行うことが一般的。所要時間は1時間~1時間30分ほどで、体にかかる負担や術後の痛みが少ないのがメリットです。

 

次の記事「見逃せない肩の痛み 「石灰性腱炎」と「変形性肩関節症」/四十肩・五十肩(11)」はこちら。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

<教えてくれた人>
鈴木一秀(すずき・かずひで)先生

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長、医学博士。1990年、昭和大学医学部卒業。肩治療のスペシャリストとして、スポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術を専門分野とし、これまでに治療してきた患者数は6,000人を超える。日本肩関節学会代議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員などのほか、早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターも務める。著書に『「肩」に痛みを感じたら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP