腕を支え、複雑な動きをする「肩関節」の仕組みとは?/四十肩・五十肩

40代を過ぎて、肩が痛い、腕が上がらないという時にまず思い浮かべるのが、四十肩・五十肩ではないでしょうか。「そのうち治るだろう」「年をとったから痛くなっただけ」と自分で判断し、放っておく人も多いですが、実は、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱えているのと同じ。気づかないうちに重症化していて、手術が必要となる場合もあるので、軽く考えるのは禁物です。

肩の仕組みをはじめ、四十肩・五十肩の原因や症状、予防法などを、麻生総合病院 スポーツ整形外科部長で、肩関節の治療を専門とする鈴木一秀先生にお聞きしました。

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負担が大きいわりに放置されがちな肩の異常

「ひざや腰の痛みは歩行や日常生活に支障をきたすため、ほとんどの人が早期に医療機関に行って治療を受けますが、肩はなんとなく動かすことができていると、適切な治療を受けず放置しがちな部位です」と、鈴木先生。では、いったい「肩」とはどこを指すのでしょうか。

腰やひじ、ひざなどの関節は前後左右の曲げ伸ばしというシンプルな動きをします。これに対し、肩の関節は少し特殊。前後左右だけでなく、ぐるりと360度に回すなど複雑に動きます。「それだけに、肩の関節は構造が複雑。現代でもまだこの分野の研究は進んでおらず、謎が多いのです」と、鈴木先生はいいます。

医学的にいうと、「肩関節」は前面で鎖骨によって胸骨とつながり、背中側では鎖骨によって肩甲骨(けんこうこつ)とつながる、広い範囲を指します。いわゆる腕を回す部分の「肩」は、肩甲骨の外側にある関節窩(かんせつか)という浅いくぼみに、上腕骨の上端にある丸い骨(上腕骨頭)がけん玉の受け皿とボールのように収まっています。この受け皿が浅いため、動ける範囲が広くなっているのです。

肩の関節は、懸垂関節です。受け皿とボールの仕組みでぶら下がっているだけで非常に不安定なため、以下のようなさまざまな組織が肩を支えています。

■関節唇(かんせつしん)
関節窩の周りに唇のように張り出す軟骨。浅い受け皿の深さや面積を広げる役割をします。

■関節包(かんせつほう)
網目状のコラーゲン線維。関節唇とつながるように関節を包み、筋肉や腱の動きをスムーズにします。

■関節上腕靭帯(かんせつじょうわんじんたい)
関節包を補強する線維上の帯。関節が外れないようにします。

■腱板(けんばん)
関節上腕靭帯と共に関節包を補強する、板状の筋肉(インナーマッスル)。上腕骨頭を包み込むように裏打ちしています。肩甲骨の
 前側に...肩甲下筋(けんこうかきん)
 上方に...棘上筋(きょくじょうきん)
 後方に...棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)
の4つがついています。受け皿である関節窩に支点を与えて上腕骨頭を動かす役割も担います。

年齢に伴って腱板機能が低下したり、姿勢や生活習慣から肩甲骨の機能が衰えたりすると、肩の関節の構造が不安定になり、ちょっとした動作が関節包を刺激して傷つけ、炎症を起こすことがあります。この状態が、いわゆる四十肩・五十肩の強い痛みになるのです。

ひざや股関節などの大きな関節は骨に支えられている部分が大きいのに対し、肩の関節は骨と骨との接触面が小さく、吊り下げられるように連結しています。頼りない構造をしていながら、可動域360度という複雑な動きをするため、負荷も大きい関節だといえるでしょう。

 

次の記事「40~60代の約7割が感じる四十肩・五十肩。主に加齢による変化が原因です/四十肩・五十肩(2)」はこちら。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

<教えてくれた人>
鈴木一秀(すずき・かずひで)先生

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長、医学博士。1990年、昭和大学医学部卒業。肩治療のスペシャリストとして、スポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術を専門分野とし、これまでに治療してきた患者数は6,000人を超える。日本肩関節学会代議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員などのほか、早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターも務める。著書に『「肩」に痛みを感じたら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)。

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